オーストラリア・アデレードでの研修を経験して
更新日 2026.10.6
このたび、公益財団法人 整形災害外科学研究助成財団のトラベリングフェローとして、オーストラリア・アデレードにて約2週間の海外研修を行う機会をいただきました。
今回の研修では、Royal Adelaide Hospital(RAH)のSpinal Unitを中心に、脊椎外科診療、手術、外来診療、研究活動など、臨床から研究まで幅広く見学させていただきました。現地ではProf. Ashish Diwanをはじめ、多くの脊椎外科医、研究者の先生方に温かく迎えていただき、日本とは異なる診療体制や研究環境に直接触れることができました。
臨床面では、Royal Adelaide Hospitalに加え、複数のPrivate Hospitalにおいても脊椎外科手術や外来診療を見学する機会をいただきました。椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊柱変形・側弯症など幅広い脊椎疾患に対して、固定術、除圧術をはじめとしたさまざまな手術を見学することができました。
その中でも特に印象的であったのが、ALIF(Anterior Lumbar Interbody Fusion)をはじめとした前方アプローチによる腰椎固定術です。日本では施設や症例によって経験する機会が限られる術式であり、実際のアプローチ方法や手術チームの役割分担、手術の進行を間近で見ることができたことは非常に貴重な経験となりました。また、同じ脊椎疾患であっても治療方針や術式選択には日本と異なる点もあり、その背景や考え方について現地の先生方から直接話を聞くことができたことも大きな学びでした。
研究面においても、非常に多くの学びがありました。滞在中には、臨床研究、基礎研究、トランスレーショナルリサーチに関するさまざまなミーティングに参加させていただき、研究テーマの設定や研究の進め方、成果をどのように臨床応用へつなげていくかについて、実際の研究体制を知ることができました。
特に印象的であったのは、臨床を担当する医師と研究を専門とするResearcherの役割が比較的明確に分かれている点です。日本では医師自身が診療を行いながら研究にも携わることが多い一方、現地では研究に専従するResearcherが研究活動の中心的な役割を担い、臨床医とResearcherがそれぞれの専門性を生かしながら協力して研究を進めていました。臨床医が研究業務そのものに割く時間は日本と比較して少ないように感じられ、その代わりに研究を専門とする人材や研究支援体制が充実している点は、日本との大きな違いとして非常に興味深く感じました。
また、大型動物を用いた研究施設を見学させていただいたことも、今回の研修の中で特に強く印象に残っています。施設では羊や豚などの大型動物を比較的容易に研究へ導入できる環境が整っており、さらに臨床で使用されるものと同等レベルのCT、MRI、SPECTなどの画像評価機器も備えられていました。
大型動物を用いた研究を、画像評価を含めて一つの施設内で体系的に行える環境は非常に充実しており、基礎研究の成果を臨床応用へつなげていくための研究基盤が整えられていることに大きな衝撃を受けました。特に、実際の臨床に近い条件で治療法やデバイスを評価できる環境を目の当たりにし、トランスレーショナルリサーチを進める上で、こうした大型動物研究施設の存在が非常に重要であることを実感しました。
こうした研究施設や研究体制を実際に見ることで、研究成果を臨床へ還元するためには、個々の研究者の努力だけでなく、研究を支える人材、設備、組織全体の仕組みが重要であることを改めて認識しました。臨床医とResearcherがそれぞれ異なる立場から一つの課題に取り組む姿勢も非常に印象的であり、日本における研究環境との違いについて考える良い機会となりました。
今回の研修を通して、海外における脊椎外科診療の実際だけでなく、医療システム、研究体制、臨床と研究の関わり方など、多くの点で日本との違いを実感することができました。単に手術手技や知識を学ぶだけでなく、脊椎外科医としてどのように臨床や研究に向き合っていくかを考える非常に貴重な経験となりました。
また、滞在中には多くの脊椎外科医や研究者の方々と交流する機会にも恵まれました。短期間ではありましたが、現地の医療・研究環境に実際に身を置き、多くの方々と意見を交わすことができたことは、自身の視野を広げる大きなきっかけとなりました。
今後は、今回の研修で得た経験や知識を今後の臨床・研究活動に活かすとともに、海外の脊椎外科医・研究者との交流も継続していきたいと考えています。
最後になりますが、このような貴重な研修の機会をいただきました公益財団法人 整形災害外科学研究助成財団の皆様、ご紹介・ご指導いただきました先生方、ならびに現地で温かく受け入れてくださったRoyal Adelaide Hospitalおよび各Private Hospitalの先生方、研究者、関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。



