Seminar/Column

セミナー/コラム

国際頚椎学会日本機構主催 ネパールの脊椎外科医との症例検討会開催記・参加記

更新日 2025.7.21

古矢丈雄 (H13卒・千葉市立海浜病院整形外科)

 国際頚椎学会(Cervical Spine Research Society, CSRS)日本機構主催による標記症例検討会を2025年7月19日に開催しましたので報告致します。脊椎外科診療を通じアジア諸国との交流を深めるため、同機構のアジア・パシフィック交流員会のメンバーが持ち回りで当番世話人となり、3-4か月に一回開催しているWeb症例検討会です。

 個人的にはネパールとの交流は10年以上前より行っており、アジア諸国の中でも最も思い入れのある国の1つです。ネパール側の当番世話人を務めてくださったDr. Dipakは旧知の仲です。2000年代初頭はネパール全体で12名しかいなかった脊椎外科医も、北海道大学鐙邦芳先生が主宰する人事交流の成果もあり、現在は100名を超えました。医療レベルも年々上がっており、脊椎外科領域においては、すでに「我々が彼らに教える」時代は終わり、対等な議論が可能となっております。今回もネパール側の提示症例では、すでに我々の(少なくとも私の)予想を超えた術式を完遂されており、大変驚きました。検討会にはマレーシア、シンガポール、韓国からの参加も含め82名の聴講がありましたが、質問も絶えず、盛会に終えることができました。

 千葉大学からは野口裕司先生にご発表いただきました。内容はしっかり伝わり、質疑も有意義なものとなりました。野口先生にとっても国際学会発表の登竜門として大変良い機会であったと思います。

 引き続き、アジアの医療の発展に、このような国際交流の機会を通じ微力ながら貢献していきたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。

第5回 ネパール症例検討会2025.7.19 参加記 平成29年卒 野口裕司

 2025年7月19日にZoomを用いたオンライン形式で開催されました「第5回 日本-ネパール頚椎外科国際セミナー」に参加させていただきましたのでご報告いたします。

 

 本セミナーは、日本頚椎脊髄病学会(CSRS-J)が主催する、日本とネパールをはじめとしたアジア各国(韓国、マレーシア、シンガポール)の脊椎外科医が互いの症例を通じて活発な議論を行う臨床症例検討会です。日本からは古矢丈雄先生が司会を務められ、日本の頚椎外科の第一線を走り続ける多くの先生方が参加されていました。

 

 私は「環軸椎不安定性を伴わない歯突起後方偽腫瘍に対するC1後弓切除術後に予期せぬ神経症状の悪化をきたした一例 (A Case of Unexpected Neurological Deterioration After C1 Laminectomy for Retro-odontoid Pseudotumor without Atlantoaxial Instability)」というタイトルで発表させていただきました。この症例は、明らかな環軸椎不安定性のない歯突起後方偽腫瘍の84歳女性に対し、C1後弓切除術を施行したところ、術後10日目に神経症状が悪化したものです。術後の検査で、頸部伸展時に後頭環椎後膜-硬膜複合体が後弓切除部で後方から脊髄を圧迫する動的狭窄が原因と判断し、後頭骨-C2固定術を追加施行したことで症状が改善したことを報告しました。術前に環軸椎不安定性がなくても、O-C2アライメントの評価が重要であることを強調させていただきました。

 

 検討会では我々の発表のほか、ネパールと日本の先生方から「Hangman骨折」や「C1外側塊の片側性肥大」、「C3骨芽細胞腫」といった、外傷から稀な疾患まで多岐にわたる症例が提示されました。各演題に対して活発な質疑応答が交わされ、オンライン形式でありながらも両国の臨床レベルの高さを感じ、大変刺激的な学術交流の機会となりました。

 

 このような貴重な機会を与えていただきました古矢丈雄先生、発表に際して丁寧なご指導をいただいた穂積先生、牧聡先生、ならびに多大なるご支援と、ご協力いただきました大鳥精司教授をはじめ千葉大脊椎班の先生方および頚椎グループの大学院先生方にこの場をお借りして心より感謝申し上げます。