第11回最小侵襲脊椎治療学会(MIST学会) 会長アワード・一般演題部門を受賞して

更新日 2021.10.31

聖隷横浜病院整形外科主任医長 

大田 光俊(H18卒)

 

10/29-30に東京で開催されました第11回最小侵襲脊椎治療学会(MIST学会)で会長アワード・一般演題部門を受賞いたしましたのでご報告いたします。私の演題は「仙骨骨折に対する新たな後方固定術 Iliosacral screwとIliac screwを連結する骨盤内後方固定」です。

 

仙骨骨折は高齢者の脆弱性骨折が急増し、日常診療で遭遇する骨折となっています。脊椎用インプラントを用いた手術が近年普及してきましたが、腰椎まで固定する方法が一般的です。我々は低侵襲性と固定性を両立すべく骨盤内で強固に固定する術式を考案しました。

 

2019年にAOSPINEのfellowshipで短期留学したパリのPitié-Salpêtrière Hospitalで出会ったE.SPINE TANIT®︎というインプラントを用いたものです。Iliosacral screwのシステムですが、他の脊椎用インプラントと連結できるという非常にユニークな特徴があり、フランスを中心として長範囲脊椎固定術の骨盤アンカーとして使用されています。当初は海外には面白い固定法があるものだなと感心して見ているだけでしたが、滞在中に日本の代理店の方が偶然病院を訪問され、日本でも平成30年に承認済みであることを知りました。

 

私はこのTANIT®︎が当時より関心があった仙骨骨折の固定に最適と考え、帰国後すぐに当時所属していたさんむ医療センターの石川哲大先生に相談し、早速翌月に第1例目の手術を行いました。その後も試行錯誤しながら1例1例症例を重ねて計10例になりましたが、手術翌日から全荷重歩行訓練が開始できる優れた固定性を実感しています。

 

MIST学会は我々臨床医にとって非常勉強になる学会で、楽しみに参加させていただいておりましたが、まさかAwardをいただけるとは全く思っていませんでした。1例目から数えて2年間、コツコツと積み重ねた結果を評価していただいた事を本当に嬉しく思っています。学会長である国際医療福祉大学 石井賢教授からは今後この術式がスタンダードになる可能性があるとお言葉をいただき、大いに励まされました。さらなる低侵襲化のため、工夫を重ねていきたいと考えています。

 

最後になりましたが、本術式を一緒に考案し、またほぼ全症例の前立ちをお願いした石川先生、さんむ医療センターと聖隷横浜病院のスタッフの皆様、そしてパリで偶然の出会いをした代理店のグッドライブス社 水上様、本術式に積極的に関わっていただいたDepuy Synthes社 酒井様にこの場をお借りして深く感謝申し上げます。