第27回日本脊椎インストゥルメンテーション学会 鈴木信正ベストペーパー賞を受賞して
更新日 2018.10.1
この度、「動的因子を加味したK-lineによる頚椎OPLLの術式選択 ~Dynamic K-lineの有用性~」という題目で、鈴木信正ベストペーパー賞を受賞いたしましたのでご報告させていただきます。(過去に山崎正志先生、古矢丈雄先生、折田純久先生が受賞されております。)
まず、私とK-lineの出会いですが、私が大学卒後4年生の時に、豊根知明先生(現昭和大学整形外科教授)からのご推薦で脊椎レジデントとして長崎県佐世保市にある長崎労災病院へ国内留学したことが始まりです。
私の恩師であり師匠でもある小西宏昭先生(現長崎労災病院副院長)から頚椎OPLLの治療方針となる「K-line」を学びました。通常のカンファレンスで、「患者さんのK-lineは…。」などと普通にプレゼンされておりましたが、ローカルなものであり外部の私には全く知らなかったのが現状です。その後、その簡便さと有用性を感じ、2004年の千葉大学整形教室例会で「当院における頚椎OPLLの治療戦略」という演題でK-lineを発表させていただきました。反響は、前方法が一般的である千葉大では、否定的な意見が多かったことを覚えています。しかし、私が大学院生として帰局した際に、山崎正志先生(現筑波大学整形外科教授)よりK-lineについてお褒めの言葉と過去に頚椎椎弓形成術除圧後に撮影した術中エコーを見返して評価してみは?とのご助言をいただきOPLLに関する私なりの研究がスタートいたしました。まずはK-lineとは何か、さらにK-line(-)では後方法単独の手術をしてはいけないという啓蒙を込めて、2008年Spineに“A New Concept for Making Decisions Regarding the Surgical Approach for Cervical Ossification of the Posterior Longitudinal Ligament: The K-Line” がacceptされました。その後、K-line(-)に対応するにはどうすれば良いか? なぜ、固定がいいのか?を頚椎OPLL患者の無症候例から研究し発表しております。その後、K-line(+)で後方法したが不良例も少なからず存在することに着目し、やはり動的因子の重要性は除くことができず、Dynamic K-lineを新たに定義することにし、今回の鈴木信正ベストペーパー賞を頂くきっかけとなりました。Dynamic K-lineは、頚椎中間位、前屈位、後屈位でのK-lineを表記したものです。その中で、Dynamic K-line(+/-/+)症例は最大圧迫高位での局所可動性が有意に大きく、術後成績がK-line(+)の中で有意に悪いという結論となりました。ですので、K-line(+)でもDynamic K-lineを計測すれば、局所の不安定性に十分配慮した手術が必要となります。 現在、前向きにK-line(+/-/+)ならば後方除圧に局所の固定を追加する方針としており、その結果を2019年の日本脊椎脊髄病学会で発表する予定です。(演題が通ればの話ですが…。)
頚椎OPLLに対する外科治療は前方法に勝るものはありませんが、何らかの事情で後方法が選択された場合、少しでもDynamic K-lineが術式選択のお役に立てればと思います。最後になりましたが、今回の受賞に関して今まで大変お世話になりました小西宏昭先生、山崎正志先生、国府田正雄先生、古矢丈雄先生、豊根知明先生、大鳥精司先生、蓮江文男先生、神谷光史郎先生さらに千葉大学脊椎グループの先生方々に深く御礼申し上げます。
写真:左から小西宏昭先生、筆者、山崎正志先生