カンボジアからの研修生を受け入れました

更新日 2019.12.28

H13年卒
古矢 丈雄

 国際頚椎機構日本支部のプロジェクトの1つにアジアの医療途上国の支援があります。私は2019年2月に代表団の一員としてカンボジアの医療視察に参加いたしました。この度、カンボジアのおける脊椎外科医療の発展を目的として、カンボジアの若手脊椎外科医師に日本で研修を行う機会を設けるプロジェクトに千葉大学整形外科および千葉大学関連病院整形外科が協力致しましたので報告します。

 

 今回は機構として2名の研修生を2か月間の日程で受け入れました。千葉大学および関連施設においてはPhearum Huoy医師を10月21日~11月9日の3週間の日程で担当しました。彼は脳神経外科がバックグラウンドのNeurosurgeonです。カンボジアでは整形外科医、脳神経外科医とも人数がまだまだ少ないようです。整形外科は外傷治療に忙しく、脊椎脊髄領域は概ね脳神経外科医が担当しているとのことでした。ちなみにカンボジアにおいて脳神経外科医は頭蓋内疾患に加え、脊椎脊髄疾患、末梢神経疾患、時に整形外科が多忙で手が離せないときは四肢骨折にも対応する必要があるとのことでした。千葉大学および関連施設での研修では主に手術見学を中心にプログラムを組みました。関連病院のサポートもいただき、Weekdayはほぼ全日脊椎の手術を組むことができ、3週間の研修で20の手術を見学していただくことができました。本人も千葉での研修を大変有意義に感じていただいたようで、相当な感謝の言葉を述べていたと次の訪問施設の先生から後に伺いました。

 

 アジアの医療途上国の医師の研修を受け入れることにより我々もいくつかの発見がありました。1つは当たり前なのですが、彼らが母国へ持ち帰って実際に実践できる技術を紹介することが重要であるということです。最新医療技術を用いた最先端の手術を見学いただくことも大切ですが、一般的な機器を用いた標準的治療について重点的に見学いただくことが最も有益であると感じました。Huoy先生は特に頚椎椎弓形成術と腰椎後方椎体間固定術について大変関心を持っておりました。もう1つは手術手技だけでなく、診断学・保存治療経過・術後生じうる合併症や長期経過における諸問題について勉強していただくことも重要であると思いました。臨床の海外研修やフェローショップというと、限られた時間のため手術見学に目が向きがちですが、診断学や疾患知識についても外来見学や日々のDiscussionの中で情報提供することが彼らのためになると感じました。

 

 研修期間中に大学内の医局会でカンボジア医療情勢に関するプレゼンテーションを行っていただきました。少ない医療資源の下、さまざまな工夫を取り入れ治療する姿勢は感銘を受けました。特に十分とは言えない手術器具のスライドと骨折用のプレート&スクリューシステムを用いた腰椎後方固定術のレントゲン写真は衝撃を受けました。

 

 最後になりましたが、本研修の受け入れを快諾いただきました大鳥精司教授に深謝いたします。また、この度のHuoy先生の研修を快諾いただきました関連病院先生 (市立青葉病院茂手木博之先生・佐藤淳先生、千葉メディカルセンター平山次郎先生・橋本将行先生、聖隷佐倉市民病院南昌平先生・小谷俊明先生・佐久間毅先生・飯島靖先生・中山敬太先生、東千葉メディカルセンター青木保親先生・井上雅寛先生、順不同)、大学手外科班先生に深謝致します。また、日々のお世話をサポートいただいた大学脊椎脊髄班先生にも心より御礼申し上げます。

  • 図1 大学病院での教授回診にて (中央がHuoy先生)
  • 図2 医局会にて (大鳥教授の右がHuoy先生)
  • 図3 医局員との記念撮影 (大鳥教授の左がHuoy先生)
  • 図4 術後の一コマ (左より沖松先生、Huoys先生、宮本先生)
  • 図5 研修最終日に日本側弯症学会 (高崎市)に参加しました (少林山達磨寺にて)