令和2年度 ちば県民保健予防基金事業助成金採択のご報告
更新日 2020.8.9
【Muse細胞投与による関節軟骨損傷修復の検討 -変形性膝関節症の予防-】
この度、令和2年度ちば県民保健予防基金事業助成金に上記表題にて採択されましたのでご報告申し上げます。
関節軟骨は自然修復能力が乏しいため元の硝子軟骨で修復されず長期的には変形性関節症に至ることが知られております。軟骨治療では軟骨移植術等が注目されていますが、手術の侵襲性や再生軟骨の非生理的な細胞配列・細胞過多などの問題もありさらなる研究が望まれている分野です。
今回、再生医療の分野で多く活用される間葉系幹細胞(MSC)の中でも、近年報告されつつあるMSCの1-5%程の割合で含まれるMuse細胞 (Multi-lineage differentiating Stress Enduring cell) に着目しました。Muse細胞はいかなる細胞へも分化できる多能性を持ち、免疫抑制機能を有し、損傷部位からの信号によって損傷部位に遊走(ホーミング)し直接的に組織修復に寄与するという特徴があります。これまで心筋梗塞や肝障害、脳梗塞などでMuse細胞のホーミングおよび組織修復が報告され治験が開始されています。しかし、関節軟骨損傷に対するMuse細胞のホーミング、分化についての報告は一つもないのが現状です。
本研究では、関節軟骨損傷モデルにおいて静脈投与したMuse細胞が①損傷部位へホーミングするか、また②損傷部位で関節軟骨に分化して組織修復に寄与するか、を明らかにすることを目的に研究を計画いたしました。本研究結果によりMuse細胞の動態を追うことで関節軟骨の修復過程を解明でき、軟骨再生に関わる重要な基礎的データを得られる可能性が十分にあると考えております。
最後に、この場を借りて公益社団法人ちば県民保健予防財団の関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。また日頃より温かいご指導と多大なご協力を頂いております、佐粧教授、大鳥教授、赤木先生、山口先生、東北大学の出澤教授、若尾先生、並びに同門の先生方にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。今後ともご指導ご鞭撻の程宜しくお願い申し上げます。