令和3年度千整会奨励賞、Award受賞のご報告
更新日 2021.12.14
同門会会員各位
拝啓
師走の候、先生方におかれましてはますます御健勝のことと御慶び申し上げます。
このたび、初めてのライブ配信によるウェブ開催での教室例会が滞りなく終了しましたことをご報告申しあげます。不慣れなウェブ運営にご迷惑をおかけしましたが、同門の先生方の多大なご協力に、心より御礼申し上げます。
本年度の千整会奨励賞およびAward受賞の先生方より、受賞の声を頂きましたのでご報告させて頂きます。
来年度の教室例会は2022年12月16日(金)、17日(土)に開催予定です。来年度も多くの演題発表を何卒よろしくお願い申し上げます。
敬具
各受賞者
2021年度千整会奨励賞(論文部門)
基礎部門:穂積崇史先生(平成25年卒)
「Gene expression profiling of the spinal cord at the chronic pain phase identified CDKL5 as a candidate gene for neural remodeling」
この度は千整会奨励賞基礎部門に選出頂き、大変光栄に存じます。
2019年4月より千葉大学大学院医学研究院機能形態学教室に所属し基礎研究をご指導頂きました。同教室では筋委縮性側索硬化症や脳梗塞など神経疾患に関する研究を行っており、私は「慢性疼痛と中枢神経の変化」というテーマを頂き、上記論文作成に至りました。
慢性疼痛は難治で有訴率も高く、世界で問題となっております。その機序は未だに解明されておりませんが、中でも脊髄は介在ニューロンやグリア細胞、下降性疼痛抑制系などが作用する重要な部位とされます。我々はRNA-seqを用い、脊髄の遺伝子発現変化を疼痛の急性期と慢性期で比較しその特徴を考察致しました。
研究から論文作成まで慣れない作業ばかりで大変なご迷惑をおかけしましたが、熱心にご指導下さいました山口淳教授をはじめ機能形態学教室の先生方、そしてこのような貴重な研修の機会を下さいました大鳥精司教授と整形外科の先生方に、改めて心より御礼申し上げます。
臨床部門:高岡宏光先生(平成18年卒)
「Comparison between intervertebral oblique lumbar interbody fusion and transforaminal lumbar interbody fusion: a multicenter study」
この度は栄えある千整会奨励賞の臨床部門に選出いただきましたこと、深く感謝申し上げます。
この論文は、千葉大関連病院で御登録いただいております、千葉脊椎レジストリから患者データを抽出し、登録された施設へお伺いしデータをまとめ、論文化いたしました。腰椎変性すべり症に対して行われ、術後3年経過した1椎間OLIF,TLIF症例の比較検討でしたが、多施設研究の利点を生かして症例数を確保できました。
この研究を通して、各施設で御活躍されております先生方の御尽力が、患者さんの良好な治療成績につながっていることを強く実感いたしました。また、その成績を論文という形で世に出していくということの大切さも教わりました。
このレジストリを統括され、この論文の直接熱いご指導を賜りました腰椎グループ稲毛一秀先生、お忙しい中お伺いしたにもかかわらず、大切なデータの御提供を快くご協力くださった先生方、各病院でレジストリデータを集計いただいている諸先生方には、この場をお借りいたしまして深く感謝申し上げます。
今後とも御指導御鞭撻の程、何卒よろしくお願い申し上げます。
若手部門:大山秀平先生(平成29年卒)
「Influence of Preoperative Difference in Lumbar Lordosis Between the Standing and Supine Positions on Clinical Outcomes After Single-level Transforaminal Lumbar Interbody Fusion」
この度、第6回千整会奨励賞若手部門を受賞しましたことをご報告致します。
本研究は昨年度東千葉メディカルセンター研修時の教室例会で発表させていただいたものであり、例会準備を進めるとともに論文化したものです。
日常診療で頻繁に遭遇する、立位と仰臥位で腰椎アライメントが変化する患者群、における1椎間TLIF後の術後成績を調査した研究であり、「立位時に仰臥位と比較しより後弯になる患者群ではTLIF術後成績(遺残症状)が不良である」という内容です。
腰椎変性疾患の手術における術後成績を予測、左右する因子はさまざまありますが、術前に用いることのできる簡便な評価指標の一つとして有用であると考えます。
本論文は自身初めてAcceptまで至った論文であり、始めての臨床研究を0から懇切丁寧に指導くださった東千葉メディカルセンター 青木保親先生のご指導の賜物であり、一人手放しには到底喜ぶことはできません。今年度につきましても、同内容、および同テーマでの他研究などを含めた内容で提出した、国際学会含む複数学会の指導を丁寧に、事前打ち合わせも何度も何度も行っていただきました。この場をお借りして心から感謝申し上げます。
本研究を通して得られた経験は内容を超えて計り知れないものがあり、その一つに千整会奨励賞という光栄な賞をいただけたこと心より嬉しく思っております。
改めまして、昨年度研修させていただいた東千葉メディカルセンターのスタッフの全ての皆様に感謝申し上げます。
今後とも臨床、研究ともに尽力して参りますのでご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。
千整会Award(発表部門)
基礎部門:菱谷崇寿先生(平成26年卒)
「scRNA-seqによる誘導性気管支関連リンパ組織 (iBALT)形成に関する新規細胞集団の解析」
本年度の教室例会にて「scRNA-seqによる誘導性気管支関連リンパ組織 (iBALT)形成に関する新規細胞集団の解析」という演題で基礎部門のAwardを頂きました。
数ある素晴らしい演題の中より選出頂き大変光栄に存じます。
2020年4月より千葉大学大学院医学研究院免疫発生学教室に所属し、ご指導頂いております。当教室ではアレルギー性疾患に深く関わるTh2細胞を中心に研究を行っており、私の研究テーマはアレルギー性気道炎症におけるiBALTの病態形成への関与の解析です。iBALTとは様々な炎症で肺に誘導される異所性リンパ組織です。整形外科領域では、関節リウマチ患者の滑膜内に同様の異所性リンパ組織が存在し、自己抗体産生に関与していることが知られています。
過去に当教室で、病原性記憶Th2細胞がiBALT内で維持されることを報告しましたが、そのメカニズムは未だ不明点が多くあります。
今回私はアレルギー性気道炎症モデルマウスをscRNA-seqなどの手法を用い、Th2細胞と相互作用している可能性のある細胞集団の網羅的遺伝子学的解析を行いました。
失敗が多く結果に繋がらない時期も長くございましたが、熱心にご指導下さいました木内政宏先生、平原潔先生、中山俊憲学長、そしてこのような貴重な研修の機会を下さいました大鳥精司教授と整形外科の先生方に、この場をお借りして心より御礼申し上げます。
臨床部門:大田光俊先生(平成18年卒)
「仙骨骨折に対する新たな骨盤内後方固定術」
この度栄誉ある千整会Award(臨床部門)をいただきました。
私の演題は「仙骨骨折に対する新たな骨盤内後方固定術」です。仙骨骨折は骨粗鬆症に起因する脆弱性骨折が急増しており、それに伴って手術を要するケースが増えています。本法は腰椎まで固定することなく骨盤内で強固に固定できることが特徴で、2019年まで所属していたさんむ医療センターで石川先生と考案した術式です。先日のMIST学会でも会長アワードをいただき、思いがけない連続受賞となりました。大変光栄です。
手前味噌ながら良い手術と考えていますが、この結果に甘んじることなく改良を重ねて参ります。今後ともご指導をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
若手部門:鈴木徳孝先生(平成30年卒)
「整形外科医にとっては診断困難だった,右大腿部痛を呈する 『ヘルニア』の1例 」
この度、第1449回千葉医学会整形外科例会の若手部門Awardをいただきましたのでご報告致します。
今回の発表は、視野の狭くなった整形外科後期研修医が、右大腿部痛を『腰椎椎間板ヘルニア』と思い込んだところ,実際は『閉鎖孔ヘルニア』という消化器疾患であったという見逃し症例に関しての発表でした。
今後同じことが無いよう、先生方の日常診療において少しでもお役に立てたらと思い、恥ずかしながら私の失敗経験を発表させていただきました。
整形外科疾患だけでなく他科疾患を鑑別に挙げる広い視野と、解剖学的な知識の大切さを再認識した症例でした。
このような過分なご評価をいただいたことに感謝申し上げるとともに、日常診療においてお役に立てましたら幸甚の至りでございます。
日常診療を含めて本発表について日々絶え間なく懇切丁寧にご指導くださいました聖隷佐倉市民病院の先生方にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
また、このような貴重な機会をくださいました大鳥精司教授をはじめ同門の先生方に心から感謝申し上げます。
今回の受賞を励みに、今後より一層精進して参りますので、今後ともご指導ご鞭撻の程、何卒よろしくお願い申し上げます。
千葉大学大学院医学研究院整形外科学
教授 大鳥 精司
医局長 古矢 丈雄
事務担当代表 橋本 瑛子
事務担当 平岡 祐