米国留学記(2022年12月)

更新日 2022.12.9

乗本 将輝(H22卒)

 2022年4月より、米国のカリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California San Diego; UCSD)に留学しております。大学院卒業後1年間、東邦大学医療センター佐倉病院での勤務後に2021年4月から留学開始予定でしたが、COVID-19の流行状況を鑑み、1年遅らせていただきました。

 

 

 

・留学の動機について

 学生時代より、英語にはやや自信がありましたので(渡米後にはまるでなくなりましたが)、一度は海外で生活をしたいと漠然と考えておりました。また、これまで私は本格的な基礎研究の経験がありませんでした。以上より、英語力と基礎研究の知識・技術の向上を目的として留学を希望しました。やや邪な動機ですが、医局人事に穴を開けて留学させていただいておりますので、残り3カ月となりましたが、多くを学んで帰国したいと思います。

 

 

 

・研究室について

 私の留学先はDepartment of Anesthesiologyで、Wendy Campana教授の下、シュワン細胞を用いた疼痛に関する研究を行っております。千葉大学整形外科から多くの先輩方が学ばれた私たちには縁の深いラボです。自身で留学先を探し出し、高い倍率を勝ち抜いて留学される先生方は素晴らしいですが、知り合いに多く経験者のいるラボでは、実験手技や立ち回り方について相談する機会に恵まれ、私としては大変助かっております。研究内容としては、当ラボに留学された先輩方がラットを用いて脈々と築き上げてきた方法論を踏襲しつつ、現在はラボ全体を挙げてマウスシュワン細胞を用い、末梢神経における疼痛の伝達機序や神経の修復に関する研究を行っております。留学開始当初は、マウスシュワン細胞の分離が安定せず、基礎的な内容で難渋し、なかなか本来の実験に移れませんでしたが、そもそもウェットラボの経験が皆無に近かった私にとっては、むしろ実験手技の基礎的な部分を学ぶ良い機会になっております。

 上述の通り、ウェットラボについて右も左も分からない、さらに英語も中途半端な状態でしたので、留学開始直後はラボマネージャーに金魚のフンのようについて回り、週1回のラボミーティングでは貝のように静かに耐え忍ぶという生活がしばらく続いておりましたが、外科手技や採血手技などで徐々にプレゼンスを発揮できるようになったほか、意外にパワーポイント・エクセルやイメージJなどのコンピューターのソフトウェアの使い方やコツを教えると喜ばれます。留学開始後5カ月ほどで私が頼りにしていたラボマネージャーが企業に移り、ラボを去りました。その方の研究を引き継いで主体的に研究を行えるようになったので、心の支えを失ってしまった一方でモチベーションは上昇したように思います。

 Campana教授は大変エネルギッシュな先生で、なおかつ大変面倒見が良いです。たまに直感的に実験内容を提案されることがあり、四苦八苦することもありますが、ラボによってはなかなかPIとコミュニケーションを取れず、実験計画の相談ができないこともあるそうなので、なんでも相談できる恵まれた環境を作っていただいているのだと思います。

 

 

 

・カリフォルニア州サンディエゴでの暮らし

 サンディエゴの気候は素晴らしいです。夏はもちろん暑いですが、からっとした心地よいものであり、日陰に入れば快適な涼しさが得られます。サンディエゴの夏を今後味わう機会がないと思うと後ろ髪を引かれます。12月ともなると肌寒いですが、コートを着込まないと過ごせないようなことはありません。ラボメイトの話によると、これ以上は寒くならないだろうとのことでした。

 食事については、もちろんいわゆるアメリカ料理に期待できるものはあまりないのですが、メキシコ国境に近いこともあってかメキシコ料理が充実しているほか、Uberでかなり豊富な種類の料理の宅配を頼めます。しかしながら、外食も宅配もとても値が張ります。一家4人でラーメンを食べて100$を超えた後から外食の頻度はかなり下がりました。日本の食材については、割高ながら日系スーパーで買えるため、自宅では日本での食生活をほぼ再現できております。また、折からの円安は、日系スーパーでの買い物だけには有利に働いております。

 住環境については、一時期アメリカ国内で大きな問題になっていた家賃の高騰も落ち着きを見せ始めております。ただ、私たちが留学を開始し、賃貸契約を結んだ頃はまさに家賃が高騰していた時期でしたので、日本から新たに留学の先生が来る度にその先生の家賃を尋ねては悔しい思いをしております。

 

 

 

・教育

 私たちが住まいを決める上で重視したのは学区です。娘が小学3年生・息子が小学1年生になる時期に渡米しましたが、現地にいる日本の友人から小学校の評判を聞いて、現在の居住地に決めました。この地域の小学校は運営資金源として保護者からの寄付に依るところが大きいらしく、熱心な保護者やOBが学校の環境が良くなるように寄付をし、それにより環境が良くなると寄付が増えるという好循環が生じているそうです。子供によっては渡米後しばらく学校に行きたがらなかったり、夜にうなされたりすることもあると聞いていたので、心配しておりましたが、通学初日から「楽しかった」との感想が聞けて、我が子ながらたくましさを感じると同時に、子供たちを励まし、勇気づけるような環境が学校に調っているのだなと思いました。

 

 

 

・旅行

 臨床から離れているせっかくの機会なので、毎週のように旅行にでかけております。サンディエゴ周辺は車で2時間程度の距離内に本当に様々なスポットがあり、とても回り切れないです。テーマパークなどの規模も大きく、クオリティも高いのですが、どちらかというと私たちは国立公園や海岸など、特に日本では味わいにくい雄大な自然を楽しむようにしております。

 

 

 

・おわりに

 この度は貴重な留学の機会を与えていただき誠にありがとうございます。大鳥教授・落合先生におかれましては、留学時期をずらすという医局人事に影響する決定をお許しいただき、ありがとうございました。また、留学に際して様々なアドバイスをいただきました折田先生・志賀先生・広沢先生にこの場を借りて御礼いたします。

 

写真1  Campana labとGonias labの集合写真

右から4番目がCampana教授

 

写真2  グランドキャニオンの夕焼け

 

写真3  ウインドウズの壁紙などでよく見かけるアンテロープキャニオン