Research

研究

英語論文に関する私見

更新日 2021.6.15

千葉大学 整形外科
江口 和 (H11年卒)

現在,少子高齢化,コロナ禍,AIの台頭,・・など,われわれ整形外科医を含め医師を取り巻く環境は昔ほど安泰と言える時代ではありません.これからの若い整形外科医にとって,ベースとなる体力はもちろんのこと,生活するためのお金も大切ですが,こういう時代だからこそ,腕(診断・手術技術)とともに業績(英語論文)が希少価値として力を発揮するのではないでしょうか.

 

医師になって4年目に初の英語論文を執筆以来,first authorとして合計37編を執筆してきた経験から私見を述べさせていただきます.

 

まず英語原著を書く意義が理解できないとモチベーションが湧いてこないかと思います.英語論文の効用として,1)医師としての投資・財産となる. 2)海外学会発表が楽勝.3)助成金・アワードが獲得できる.4)業績,履歴書に掲載できる.5)学位,将来教授選などの参考になる.などが挙げられるかと思います.そして原動力として,ハングリー精神,お金(研究費)が必要であり,これらがかみ合って相乗効果を生み出します.

 

私が心がけているのは,とにかく敷居を下げることです.論文は書くべくして書くものであり,本来非常に楽しい作業です.気軽に日記を書くように,日本語で論理的に書くことがポイントかと思います.論文は結果(Result)が全てです.ですから,1)Result→2)Method→3)Introduction→4)Discussionという順番で書き進めております.ResultとMethodが完成すればほぼ完成したと言っても過言ではありません.Google翻訳などの英語翻訳の力を借りて微調整をして英語校正に提出します.Google翻訳は最近精度が格段にあがっており舌を巻くレベルです.英語校正はJam post(https://www.jamp.com/index.cfm)を利用しておりますが,2週間の期間で2-3万円の費用で可能です.英語校正が完成する間に英語投稿の準備を完了しておきます.また論文投稿後,reviseや運悪くrejectで返ってきた際の留意点ですが,即対応して論文を手元に置く時間を極力短縮することが論文量産の秘訣です.

 

天然痘ワクチンを発明したエドワード・ジェンナーは恩師ハンター医師からの座右の銘“Don’t think, but try: be patient, be accurate,”(あまり考えることはやめて,とにかく挑戦してみることだ.辛抱強く,そして正確にね.)に励まされ,地道に実験成果を英語論文化したことが世界に認められ,1980年の天然痘撲滅につながったそうです.

 

目の前の患者さんを救うのは大事ですが,日々の日常診療で面白い発見をしたら,気軽に書き留めて英語論文化してみましょう.将来,多くの人を救える治療法につながるかもしれません.