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論文投稿の実務的なTips – 初めての投稿でつまずかないために

更新日 2024.11.3

千葉大学 整形外科
牧 聡(H18年卒)

研究成果を論文として発表することは研究者にとって重要な活動ですが、実際の投稿プロセスでは意外な落とし穴がたくさんあります。本記事では、特に初めて論文を投稿する先生に向けて、実務面での重要なポイントをまとめました。

 

1. 投稿先の雑誌選定に関する注意点

似た名前の雑誌に注意

近年、学術雑誌の数が増加しており、似た名前の雑誌も多く存在します。例えば、整形外科分野では以下のような類似した名称の雑誌があります:

  • Journal of Orthopaedic Science
  • Journal of Orthopaedic Research
  • Journal of Orthopaedic Surgery
  • Journal of Orthopaedic Surgery and Research

これらは全て整形外科領域の学術誌ですが、それぞれ特徴や対象とする研究分野が異なります。

投稿前の確認ポイント:

  • ISSNの確認
  • 出版社の確認
  • インパクトファクターの確認

 

2. Editorial Managerの効率的な利用

アカウント管理のコツ

Editorial Manager(EM)システムは、異なる雑誌でも同じプラットフォームを使用しています。Chromeなどのブラウザでは同じサイトとして認識されるため、以下の対策が推奨されます:

  • IDとパスワードは、異なる雑誌でも同じものを使用
    • 複数の組み合わせを管理する手間を省ける
    • ログイン情報の混乱を防げる

投稿プロセスの所要時間について

  • 投稿の各プロセス(アカウント承認、ファイルアップロード、最終PDF生成など)に初めての場合だと1週間程度かかることがあります
  • 投稿締切が決まっている場合は、十分な余裕を持って投稿作業を開始しましょう

原稿ファイルの分割方法の確認

投稿規定を読んだだけでは、具体的なファイルの分割方法(本文、図表、補足資料など)がわからないことが多くあります。その場合は:

  1. Editorial Managerのファイルアップロードページに実際にアクセス
  2. そこで要求されているファイルの種類と形式を確認
    • 本文ファイル(Title page, Main document など)
    • 図表ファイル(Figure, Table など)
    • 補足資料(Supplementary materials など)
  3. 要求されている形式に従って原稿を分割

 

3. Corresponding Author(責任著者)に関する重要事項

Corresponding Authorの選定

  • Corresponding Authorは通常、研究全体を指導・統括する立場の研究者が担当します
  • 選定の際は必ず直接の指導教官や上司に確認を取りましょう
    • 研究室や部署の方針により、誰がCorresponding Authorを務めるかが決まっていることが多いためです
    • 特に若手研究者が筆頭著者の場合は、必ず事前に相談しましょう

Corresponding Authorの役割と責任

  • 研究全体の監督責任
  • 投稿プロセス全体の管理
  • 査読者とのやり取り
  • 出版後の問い合わせ対応

実務的なポイント

  1. カバーレターはCorresponding Author名義で作成
  2. Corresponding Authorのアカウント登録時は、Corresponding Authorの過去の論文で使用していたメールアドレスを登録
    • 研究の継続性の確認
    • 査読者からの評価の一貫性維持
  3. 投稿の承認段階ではCorresponding Authorに処理が引き継がれる

 

4. 研究費・資金援助の記載

Acknowledgementとフィナンシャルサポートの連動

  • Acknowledgementセクションに記載した資金援助は、必ずFunding欄にも入力
  • 記載内容の整合性を確認
    • 課題番号
    • 資金提供機関名
    • 支援プログラム名

 

5. 投稿規定の効率的な理解方法

最新の掲載論文をお手本に

投稿規定を読んでも細かい要件が把握しきれない場合は、以下を確認:

  1. 対象雑誌の最新号から類似分野の論文を選択
    • 投稿規定は適宜更新されるため、最新の論文を参考にする
  2. 確認すべきポイント:
    • セクションの構成
    • 図表の配置と形式
    • 引用文献の形式
    • 補足資料の扱い

 

6. 共著者との最終確認プロセス

投稿前の最終確認手順

  1. Editorial Managerでの投稿作業完了後、システムが生成するPDFを入手
  2. そのPDFを全共著者にメールで回覧
  3. 共著者からの修正点の指摘を受け付け
  4. 全共著者から明示的な承認を得る
    • この時点ではまだ修正が可能
    • 承認を得てから実際の投稿ボタンを押す

確認依頼時の注意点

  • 確認期限を明確に設定
  • 修正が必要な場合の対応手順も併せて共有
  • 全員の承認が得られるまで投稿を待つ

 

投稿プロセスは研究成果を公表する重要な段階です。本記事で紹介した実務的なポイントを押さえることで、スムーズな投稿プロセスを実現できることを願っています。