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2021 British Philosophy of Sport Association McNamee Student Essay Prize 受賞のご報告

更新日 2021.10.25

 

2020年秋より、欧州委員会の大学院Erasmus Mundus Joint Master of Arts in Sports Ethics and Integrity (MAiSI)に留学しております、平成22年卒の貞升彩です。

 

 この度、Routledge / Taylor & Francis社の協賛で行われたBritish Philosophy of Sport Association が主催する2021 British Philosophy of Sport Association McNamee Student Essay Prizeで2位を受賞しました。賞金に加えて、12月に行われる学会でプレゼンを行う機会をいただけることになりました。この賞の名前にもなっている Prof. Mike McNameeはMAiSIのコーディネーターを務める教授であり、現在WADAの倫理審査委員会のメンバーです。また私たちはこの学会のメンバーの先生方からMAiSIで哲学の授業を受けてきましたため、同級生の多くがこの賞に応募しておりました。

 

 エッセイのタイトルは、”Is the Prohibition of Women in Sumo Justified as a Rule in Sports?”であり、日本の大相撲における女人禁制は哲学的に考察すると正当化できるか議論した論文です。演繹法を用い、大相撲をスポーツ哲学者のSuitsによるスポーツの定義から吟味して日本の伝統的な祭りと区分してスポーツと定義し、そのうえでオリンピック憲章と照らし合わせスポーツにおいては性別で参加を禁止することはできないと論じ、ゆえに相撲がスポーツであるならば女人禁制は正当化できないという結論を導き出しました。

 

 哲学の授業はこの1年間でそれなりに受けてきましたが、自分では十分哲学だと思いながら課題のエッセイを書いても、ことごとくこれは哲学じゃないねと、Prof. Mike McNamee含め複数の教授陣からコメントされ続けてきたので、最近は多くを求めず単位だけとれればいいと思っておりました。そんな中で学生対象のコンペとは言え、賞をいただけたことはとても驚きであり、大変うれしく思います。ですが、やっぱりあまりにもまだこの分野に不慣れすぎて、受賞理由のコメントを読んでも、今回のエッセイの何がよくて、何が今までのエッセイと違うのかわからない状況です。いつの日かもう少し考えが柔軟になって、いろいろなことが分かるようになればいいなと思います。

 

 1位を獲得したのはクラスメートのブラジル人で、ブラジルでスポーツ哲学の博士号をとっており、私とは雲泥の差があります。その人と二人学生として哲学の学会で発表して、質問の時間では、哲学ならではの長い問答のようなもの(医学の学会の質疑応答とはだいぶ違います)をしなくてはならないと思うと恐怖しかありません。あまりに畑違いすぎて、どんな質問が来るのかも考えが及ばないのでその同級生のお知恵を拝借しようと思っています。

 

 最後になりますが、海外に在住して、多様性にあふれた素晴らしい環境に身を置き、クラスメートや先生方、インターン先から日々刺激を受けて勉強や仕事ができることを大変ありがたく思います。そして、日本で多くの人に支えられながら得てきた知識や経験、それから私たち日本人の独特な文化背景をこのようにスポーツ哲学の分野につなげ、海外で評価してもらえたことは何よりうれしく、そして誇りに思います。これからも精進してまいります。