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名誉教授の独り言 (168) 横綱稀勢の里の鈍感力

更新日 平成29年2月27日

 稀勢の里が横綱になってくれて、1ヶ月が過ぎました。昨年、大関で優勝した琴奨菊と豪栄道は優勝後、いかにも多忙で次場所との間に十分な稽古が出来なかったようでしたが、稀勢の里にはそのようなことが無いように祈っていました。しかし、あれやこれやと多忙の様で3月場所を心配しています。世間では2つの予想があるようで、もともと力のある力士ですし、もう優勝しなければならないというpressureもなくなるでしょうから、そこそこ活躍してくれると思う、という予想と、横綱として恥ずかしい相撲は取れないというpressureで硬くなってしまいある程度負けてしまうのではないかという予想があるようです。某新聞社のベテラン相撲記者さんに「どうでしょうか?」とお伺いしましたら、「稀勢の里はマイペースを守る方ですし、ある意味で鈍感なので大丈夫でしょう」という返事でした。「稀勢の里の鈍感力かー」と妙に納得しました。
 稀勢の里は貴乃花に次ぐ史上2番の若さで十両に昇進し、そのころから将来は横綱と言われていました。平成12年11月場所直前に師匠の鳴門親方(元横綱隆の里)が急逝したのに、それにもめげず大関になった鈍感力は大したものだと思います。その後、2013年から綱取りと言われていたのに何度もここ1番という時に敗れて優勝もできず、横綱にもなれませんでした。今回やっと横綱になれましたが、次の3月場所の成績が大変気になっています。稀勢の里の鈍感力に期待して、連続優勝は無理としても、何とか3敗ぐらいまでで止めてくれればと願っています。
 私は10年前に鹿島労災病院勤務中に胃癌で胃の4分の3を切除する手術を受け、以後定期的に1年に1度胃カメラ検査を受けていました。今回昨年11月の定期検査で胃癌の再発が認められ、12月6日に再発胃癌に対し胃カメラでの粘膜切除を受けました。私は慢性の腰痛があるのですが、それに対する痛み止めの服用は2ヶ月間許可が出ませんでした。その間に1月場所があり、ほぼ毎日両国に通っていて砂かぶり席に1日3~4時間座っており、持病の腰痛が大変辛くなり、腰仙ベルトと温熱シップでは大変つらいものがありました。粘膜切除の後、食事制限もあり、12月、1月とかなり無理も重なり、一時は体重が2Kgぐらい減ってしまいました。今は痛み止めを必要に応じて服用していますし、最近2週間ぐらいはやっと体が少しずつ楽になってきてゴルフもかなり回復しました。私は1月場所で横審10年、最後の2年間委員長が任期満期終了です。稀勢の里に引退の花道を飾っていただき、明治神宮手数入り、その後の直会も楽しませて頂きました。感謝感激でした。白鵬、日馬富士、鶴竜の時も出席しましたが今回が1番感動的でした。
 稀勢の里がこんなに綱が似合う横綱になるとは思ってもいませんでしたし、こんなに立派な土俵入りが出来るとも思っていませんでした。元々、横綱・大関には大変強い大関で、白鵬の63連勝を止めたのも稀勢の里ですが、平幕力士にあっさり負けてしまう悪い癖があり、最終的には優勝出来ず横綱になれない時期が続きました。それでもあきらめずに大関を張り続けたのは並大抵な感覚の持ち主ではなく、かなりの鈍感力を持っているように思います。今後はその鈍感力を生かして最低でもあと10回は優勝してほしいと願っています。