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名誉教授の独り言(175) これからの高齢者医療

更新日 平成29年8月13日

 このところ体調をくずしていましたが、最近やっと回復してきました。昨年3月の慢性硬膜下血腫に対する緊急手術、12月の再発胃癌に対する胃カメラによる粘膜切除などの影響で体力回復が遅れたように思っています。
 先日、ご主人の整形外科学教室の先輩として若い時に大変お世話になり、奥様にも色々お世話になった80台半ばになられた奥様が急逝し、お知らせを頂いたのでお通夜に行ってきました。生前に何かにつけお声をかけて下さり、彼女に褒められるのが嬉しくていろいろしたように思います。お清めの席で喪主であるご長男の次に、何か喋れと言われたので、「ご子息とお嬢様は先生ご夫妻のなれそめを知っていますか?」と切り出したら「知らない!ぜひ話して!」とのことだったので、多少粉飾して話をしてから、「故人は現役力士の名前を一人も知らないのにTV中継を守屋を探すために見てくれていました。その期待に応えて横綱審議委員会委員長として稀勢の里を横綱にしました」と話しました。娘さんと息子さんが嬉しそうにうなずいてくれました。言い方が適切ではないかもしれませんが、たいへん素晴らしお通夜でした。
 この10年で75歳以上の高齢者は1.3倍に増えているそうで、その分、高齢者医療費も増えているようです。高齢者の多くは大変つましい生活をして自身の医療費も出来るだけかからないように努力をされているように思います。サプリメントのお金は大変なので医療費で何か貰えないかと言ってきた患者さんもいました。
 8月1日から高齢者医療の外来・入院負担金や月々の自己負担限度額がまた値上がりしました。詳細は判りずらく、私も十分には把握していませんが、入院食事代などは来年また値上げされるようです。高齢者介護の月々の負担額も値上がりするようです。高齢者には益々住みにくくなってくるようです。
 口から食べられなくなった患者さんに胃ろうという方法がありますが、現在、大きな問題になっており、だんだんに胃ろうを造設しないようになっているようです。中には口から食べられるのに胃ろうを造設している病院もあるようです。先日知りましたが最近は胃ろうの代わりに診療報酬費が高くなった中心静脈栄養(IVH)をする老人病院が増えているという事です。お金儲けの医療ではなく、患者さんの尊厳を重んじた医療をしていただきたいと切に望んでいます。日野原重明先生の凄かった事の一つは最後に点滴、胃ろうなどの延命治療を一切受けず、なすがままに天寿を全うなされたことのように思います。
 私ももう76歳です。回復の見込みのない病状になった時には一切の延命治療はしてほしくないと思っています。