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名誉教授の独り言 (167) 横綱稀勢の里(2)

更新日 平成29年2月9日

 稀勢の里が横綱になってくれて、まもなく3週間になります。稀勢の里はここで勝ってほしいという時に負け続けました。日本人は判官びいきの人が多いのですか?と元横審、人間国宝の歌舞伎役者澤村田之助さんに聞いたことがあります。田之助さんは歌舞伎には「義経もの」をはじめとする判官びいきの演題が沢山あります、との答えでした。稀勢の里は正に多くの日本人にとって勝って欲しいのに勝たなかった、勝てなかった、という対象だったのではないかと思います。去年9月の稽古総見では日馬富士に徹底的に可愛がられ、私は相撲記者に10戦全敗、あんな負け方では本場所でも絶対に勝てません、と言ってしまいました。結果は10勝5敗でした。九州も12勝3敗でした。苦節何年だったでしょうか。今場所やっと優勝したのですから大人気になるのは当たり前です。この後は稀勢の里が横綱に相応しい活躍をしてくれることを願うばかりです。
 私は横審を満期終了になりましたので、これからの日本大相撲はどうあるべきかとかの意見を言う立場にはありませんが、一寸だけ言わせてもらいます。現在、大相撲は絶大な人気です。稀勢の里の横綱昇進のお陰だとは思いますが、私にはそれ以上は判りません。でも、私はある幹部理事に敢えて言いました。「世相というのは突然激変します。人気が上がるのは急ですが、下がるときも急です。数年前のガラガラの国技館を見た者の一人として今のうちに手を打っておくべきではないかと思っています」と。でも、相撲界はなかなか変えづらい体質のようですし、変えたがらない世界のようです。
 今の相撲界は色々な問題を抱えているように思います。例えば中学卒業で何処かの部屋に入門したとして、その子は部屋の掃除、洗濯、食事作り、雑用をしながら稽古をするといっても、月給は0円です。こんな社会は他にはありません。将来、横綱になれば物凄いお金が入ってくるようですが、その確率は1000分の1ぐらい、あるいはもっと低いのではないでしょうか。引退してちゃんこ屋をやる元お相撲さんは多いようですが、どんなに美味しいちゃんこでもそんなに頻繁には通わないので、両国かその近く、あるいは余程特徴のあるお店でもない限り、長続きしないようです。現在、日本相撲協会の運営は全て相撲経験者で行われています。だからダメだとは言いません。でも、私はマネージメント専門の方が運営に携わったら、もっともっと利益が上がり力士が幸せになる組織になるのではないかと思っています。東京場所に10日以上行っている身としては、あの座る所を改善してくれたらと思っています。砂かぶりは座布団一枚です。あそこに3時間以上座っていると辛いものがあります。もっと遅く行けば良いのかも知れませんが、つい貧乏人根性で早く行ってしまいます。それに幕下上位の相撲は月給取りになれるかどうかなので、皆真剣勝負で見ていて楽しいのです。桟敷席であの狭いところに4人座るのも大変です。相撲によく似ているといわれている歌舞伎でも現在は椅子席です。などなど改善してほしい点は色々あります。
 それはそれとして今心から望んでいるというか祈っているのは、稀勢の里が3月場所で、そこそこの成績を上げてくれることです。せめて3敗以内に収めてくれることを祈っています。稀勢の里が今後、今回の事を自信に変えて大活躍してくれると意見と、綱の重責を感じて以前の稀勢の里に戻ってしまうという意見があります。私は前者であってほしいと願っています。稀勢の里頑張れ!頑張れ!