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令和4年12月 令和4年度千整会奨励賞、Award受賞のご報告

更新日 2022.12.23

同門会会員各位

 

拝啓

師走の候、先生方におかれましてはますます御健勝のことと御慶び申し上げます。

このたび、3年ぶりの現地開催での教室例会が滞りなく終了しましたことをご報告申しあげます。200名を超える多くの同門の先生方にご参加いただき、久しぶりの現地発表と活発なご討議に助けられ、非常に盛況な会で終えることができました。皆様のご協力に心から感謝申し上げます。

本年度の千整会奨励賞およびAward受賞の先生方より、受賞の声を頂きましたのでご報告させて頂きます。

来年度の教室例会は2023年12月15日(金)、16日(土)に開催予定です。来年度も多くの演題発表を何卒よろしくお願い申し上げます。

 

 

敬具

 

各受賞者

2022年度千整会奨励賞(論文部門)

基礎部門:沖松翔先生(平成25年卒)

「Early decompression promotes motor recovery after cervical spinal cord injury in rats with chronic cervical spinal cord compression」

この論文はラットを用いた脊髄損傷に関する動物実験で、脊髄圧迫病変を有するモデルラットを作成後に脊髄損傷(軽症の脊髄損傷)を加え、除圧のタイミングによって行動学的・組織学的に差が出るかどうかを検討しました。結果としては、除圧のタイミングによらず、非除圧群よりも除圧した群は行動学的、組織学的に良好な成績が得られることが分かりました。一般的に臨床においてはFehlingsらのグループが報告している、脊髄損傷に対する24時間以内の除圧術が運動感覚の回復に有意に働くということがコンセンサスになりつつありますが、重症度の違いでこのような結果の違いが出ている可能性が示唆されました。さらなる重症モデルでの検討を、頚椎グループの永嶌優樹先生が引き継いでやってくれております。その結果に期待したいと思います。

この場を借りて、いつも貴重なご意見をいただける大鳥精司教授、直接指導頂いた古矢丈雄先生、牧聡先生、一緒に実験を頑張った三浦正敬先生、実験や切片作成・組織染色のご指導を頂いた森田育美様、動物舎のスタッフの方々、尊い命を預けてくれたラットたちに心から感謝申し上げます。有難うございました。

今後は基礎実験からは離れ主に臨床中心の日々となりますが、今後ともご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

写真:沖松 翔先生の代理者として登壇された古矢 丈雄先生と高橋和久名誉教授

 

 

臨床部門:篠原将志先生(平成23年卒)

「Time-Dependent Change in Cartilage Repair Tissue Evaluated by Magnetic Resonance Imaging up to 2 years after Atelocollagen-Assisted Autologous Cartilage Transplantation: Data from the CaTCh Study」

この度、多くの先生方のご指導・ご協力を賜り、千整会奨励賞臨床部門に選出いただきましたことをご報告させていただきます。

本研究は自家培養軟骨(JACC)移植術後のMRIによる形態的および質的評価の経時的変化を明らかにし、関節鏡評価とMRI評価との関連を分析したものです。

千葉県内における多施設共同研究であるCaTCh study (Cartilage Treatment in Chiba)登録施設においてJACC移植術を施行された症例を対象に、MRIにおける形態的評価(3-D MOCART、MOCART2.0)と質的評価(T2、T1rhoマッピング)を解析しました。

また、その解析によって得られた結果と関節鏡評価の関連を解析しました。結果としては、JACC移植術後24ヶ月まで経時的にMRIによる形態的および質的評価は改善し、関節鏡評価が良好であるほどMRI形態的評価が良好であることが分かりました。MRIは形態的評価の手段として関節鏡評価の代替となる可能性があるという結論となりました。

研究の進め方、論文作成方法など、数々のリサーチミーティングを通して熱心にご指導いただきました佐粧先生、赤木先生ならびにスポーツグループの先生方に心から感謝申し上げます。また、都賀整形外科リハビリクリニックの渡辺先生にはMRI解析方法について丁寧に指導してくださり、深謝いたします。研究のみならず臨床においてもより一層精進していく所存であり、今後ともどうぞご指導のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

 

写真:篠原将志先生と高橋和久名誉教授

写真:篠原将志先生

 

若手部門:水谷雅哉先生(平成31年卒)

「A 2‐year longitudinal study of skeletal muscle mass in women over 40 years of age with degenerative lumbar scoliosis 」

この度は千整会奨励賞若手部門に選出していただき大変光栄に存じます。

本研究は私が整形外科1年目のときに、江口先生に誘っていただき始めた研究となっております。豊口先生にご協力いただき、千葉きぼーるクリニックのデータを使わせていただき、多くの先生方のご指導のもと論文にすることができました。内容としては「2年間の縦断研究では、脊椎アライメントに有意な変化はないが、体幹筋量はコントロール群と比較してDLS群では2.5倍早く低下しており、体幹筋量の低下が脊椎アライメントの増悪に先行することが示唆された。」というものです。整形外科医として初めて作成した論文でしたが、右も左もわからない状況から、データ整理、解析、論文の書き方にいたるまで、江口先生にご指導いただき、様々な迷惑をおかけしながらなんとか完成に至ることができました。本論文はISSLSでのOral presentation含め、様々な学会で発表の機会をいただきました。これらの経験は自分の中で大変貴重な体験となっております。今後も本論文に見合うような実績挙げれるよう精進したいと思います。最後になりましたが、本研究を一から手伝っていただいた江口先生を始め、データを提供してくださった豊口先生、さまざまなご意見、ご提案をいただいた教官の先生方にこの場を借りて深く御礼申し上げます。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

 

写真:水谷雅哉先生と高橋和久名誉教授

 

写真:水谷雅哉先生

 

千整会Award(発表部門)

基礎部門:三浦正敬先生(平成26年卒)

「ラット脊髄慢性圧迫モデルにおける、脊髄症発症ラットと無症候ラットの 比較 」

本年度の教室例会にて「ラット脊髄慢性圧迫モデルにおける、脊髄症発症ラットと無症候ラットの比較」という演題で基礎部門のAwardを頂きました。

数ある素晴らしい演題の中から、このような栄えある賞に選出頂き大変光栄に存じます。

私は2020年4月に大学院に帰局し、古矢丈雄先生から「圧迫性脊髄症の病態解明」という壮大なテーマを頂きました。頚椎症性脊髄症は脊椎脊髄疾患の中で最も頻度の多い疾患の一つですが、その病態は未だにほとんど解明されておりません。基礎研究に関しては脊髄損傷領域に比べて大きく遅れを取っているのが現状です。今回、壮大なテーマの中から着眼点を絞り、虚血ストレスに応答して神経細胞に発現するOxygen-regulated-protein150 (ORP150)という神経保護タンパク質に着目して、ORP150が脊髄症の発症の有無に関連するかどうかを検討しました。

結果は、脊髄圧迫によるORP150の上昇が確認され、脊髄圧迫による脊髄虚血の存在は示すことができましたが、ORP150が発症の因子とまでは言えないというものでした。目標としていた脊髄症の病態解明には届きませんでしたが、少しでも脊髄症の基礎研究を一歩前に進めたいという思いと、これまでの過程を評価いただきまして、大変嬉しく思っております。熱心にご指導下さいました古矢丈雄先生をはじめ、牧聡先生、二人三脚で一緒に実験を進めてくださった沖松翔先生、頚椎班大学院生の先生方、そしてこのような貴重な研修の機会を下さいました大鳥精司教授と整形外科の先生方に、心より御礼申し上げます。

 

 

写真:三浦正敬先生と南昌平先生

 

写真:三浦正敬先生

 

 

 

臨床部門:渡辺丈先生(平成25年卒)

「ばね指への低用量トリアムシノロン腱鞘内注射の治療成績 」

この度、令和4年度千葉医学会整形外科例会にて臨床部門最優秀演題賞に選出いただきましたのでご報告いたします。

私の演題は「ばね指への低用量トリアムシノロン腱鞘内注射の治療成績」というもので、結論からいうと「ばね指に対してケナコルト4mgでの腱鞘内注射は4週間の投与間隔をあけていれば複数回注射しても合併症をきたす可能性が低い」ということです。

ばね指に対する治療としてケナコルトの腱鞘内注射は有用ですが、再発を繰り返す症例には複数回ケナコルト注射を打つ場合、感染や腱断裂などが起きないかと不安がつきまといます。一般的には2,3回の注射で改善なければ手術を推奨するといわれていますが、地域によっては手術ができない、患者さんが手術を希望されない場合もあると思われます。患者さんに、この量で間隔をきちんと守れば大丈夫、というデータが示せるのは、患者さんと治療方針を決める上で一つの大きな判断材料になりうると思っています。

同門の方々が集まるこの例会で、この結果が広く周知されるのは大変光栄なことです。これもひとえにご指導いただいた松浦先生はじめ、手外科の先生方が長年積み重ねてきた結果のお陰でもあります。今回は260指での検討でしたが、現在は多施設でさらに症例数を増やしている最中であり、今後の学会発表や論文につなげていきたいと思います。

改めまして、関係者の皆様に御礼申し上げます。

 

写真:渡辺丈先生の代理者として登壇された戸口泰成先生と南昌平先生

 

 

 

若手部門:水谷雅哉先生(平成31年卒)

「不安定型大腿骨転子部骨折に対してOLSAを使用した経験 」

この度は例会Award若手部門を受賞することができ大変光栄に存じます

本研究は大腿骨転子部骨折という若手が最も多い件数直面する症例の中で、後外側骨片(PL骨片)を有する中野3DCT分類3Part以上の症例に対して、後外側骨片をOLSAというデバイスを使って整復してからネイルを挿入することで、術後のリハビリ期間が短縮したという研究になっております。

自分自身PL骨片を有する転子部骨折に対して、ネイルが骨折部から入ってしまったり、だからといって大転子把持鉗子などで整復するのもネイル挿入のじゃまになったり、整復位がすぐ崩れてしまったりとあまり気持ちよく手術できた経験がありませんでした。

そのときに日本整形外科学会の企業ブースを見学しているときに、OLSAと出会いました。OLSAについて勉強するうちにその有用性に気づき導入を決意しました。

導入するに当たり高山先生、高橋先生にその有用性を説明し許可をいただき、金銭面・手術室に相談などを行うなどの、新規デバイスを導入するためのステップを学ぶこともできました。

 まだまだControversialな領域であり、一概にいいとは言えませんが、使用を考慮する価値はあると思っております。

 本研究にあたり、OLSAの導入を快諾していただいた高山先生、高橋先生はじめ、前立ちをしてくださった佐久間先生、松沢先生にこの場を借りて深く御礼申し上げます。

 今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

写真:水谷雅哉先生と南昌平先生

 

写真;左より南昌平先生、水谷雅哉先生、戸口泰成先生、三浦正敬先生、落合信靖准教授

 

千葉大学大学院医学研究院整形外科学

 教授 大鳥 精司

医局長 松浦 佑介

事務担当代表 橋本 瑛子

事務担当 野本 尭