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令和5年度教室例会開催のご報告

更新日 2023.12.22

同門会会員各位

 

拝啓

師走の候、先生方におかれましてはますます御健勝のことと御慶び申し上げます。

このたび、教室例会が滞りなく終了しましたことをご報告申しあげます。240名を超える多くの同門の先生方にご参加いただき、活発なご討議に助けられ、非常に盛況な会で終えることができました。皆様のご協力に心から感謝申し上げます。また、4年ぶりに開催することができました忘年会におきまして、同門の先生方と久しぶりに対面でお話しすることができた喜びを実感した会となりました。

また、本年度の千整会奨励賞およびAward受賞の先生方より、受賞の声を頂きましたのでご報告させて頂きます。

来年度の教室例会は2024年12月13日(金)、14日(土)に開催予定です。来年度も多くの演題発表を何卒よろしくお願い申し上げます。

 

 

敬具

 

各受賞者

2023年度千整会奨励賞(論文部門)

基礎部門:細川博昭先生(平成24年卒)

「Nuclear receptor subfamily 1 group D member 1 in the pathology of obesity‐induced osteoarthritis progression」

この度第8回千整会奨励賞基礎部門に選出していただきましたことをご報告申し上げます。

本研究は、メタボリックシンドロームによる変形性膝関節症の発症メカニズムに焦点を当て、マウスを用いた動物実験によりその分子生物学的側面を調査しました。結果としましては、高脂肪食による肥満マウスでは通常の食事群と比較して軟骨の変性が進行し、同時に概日リズム遺伝子の発現が低下することが明らかとなりました。更に、概日リズム遺伝子のアゴニストを投与することで軟骨変性が改善する結果を得たことで、肥満による軟骨変性には概日リズム遺伝子が関与している可能性が示唆されました。これらの知見は、遺伝子発現と組織学的評価を通じて示され、変形性膝関節症の病態解明に寄与するものと考えられます。

このような貴重な経験をさせていただいた大鳥精司教授、研究計画から論文作成、アクセプトに至るまで何度もの議論を経ながらご指導、ご支援を賜りました赤木龍一郎先生、佐粧孝久教授、山口智先生、木村青児先生、他グループにも関わらずご指導をいただきました教官の先生方に心より御礼申し上げます。また、実験におきまして田尻育子様、森田育美様から多くのご指導を賜りましたこと、スポーツグループ大学院生の先生方には心強いサポートをいただきましたことにも感謝申し上げます。

今回の経験を生かし、後輩指導や日常診療において一層の成長を遂げてまいります。今後もご指導、ご鞭撻を賜りますようお願いいたします。

 

 

臨床部門:中嶋啓文先生(平成28年卒)

「Validity of the center-center method for the syndesmotic fixation axis compared to the trans-syndesmotic axis」

この度は第8回千整会奨励賞臨床部門に選出して頂き、誠に有難うございます。

このような素晴らしい賞を受賞出来たことを大変光栄に思います。

私は昔からサッカーをしており、足関節の怪我に悩まされることが多かったです。

そのため、足関節の外傷に関わる研究がしたいと思っていました。

大学院入学後にこの研究を選択し、データー収集の毎日に明け暮れました。

英語論文を書くのは初めての経験であり、足の外科グループの山口先生や木村先生にご指導頂きながら作成することができました。

Foot and Ankle Internationalからacceptの連絡が来たときの喜びは、未だに忘れることはありません。

今後も多くの研究に携わり、その結果を論文にし、医療に還元していきたいと考えています。

最後になりますが、この度は誠に有難うございました。

 

若手部門:山村純史先生(令和2年卒)

「Readability and quality of online patient resources regarding knee osteoarthritis and lumbar spinal stenosis in Japan」

この度、第8回千整会奨励賞若手部門に選出いただき大変光栄に存じます。

本研究は、インターネット上の変形性膝関節症と腰部脊柱管狭窄症に関するウェブサイトの、質と可読性を定量評価するという内容です。ウェブサイトのレイアウトや治療選択枝などの質を専用のツールを用いて評価し、文章の読みやすさや難易度を、自動判定ツールを用いて評価しました。

結果は、基準を満たすウェブサイトはほとんどなく、質が低く文章は難しすぎました。

臨床研究とは視点の異なる新しい研究で、とても新鮮な気持ちで研究に臨みました。様々なウェブサイトの情報がある中で、研究を進めていくにつれて、いかに専門用語を使わずに、わかりやすい言葉で患者さんに説明することができるか、ということはとても重要なことであり、医師としての責務であると改めて実感し、とても充実した研究でした。

最後になりますが、この研究を最初から最後まで、熱心にご指導いただいた山口先生、渡邉先生、そして様々なご意見やご指導をいただいた教官の先生方、大学院の先生方、このような貴重な機会をいただいた大鳥精司教授、多くの先生方に心より感謝申し上げます。

今後とも、ご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

 

千整会Award(発表部門)

基礎部門:大山秀平先生(平成29年卒)

「シンプルなテーブルデータを基にした、思春期特発性側彎症の角度進行を予測する機械学習モデル」

はじめに、このような栄えある賞に選出いただき光栄に存じます。

本研究は「側彎症の進行予測」という伝統的なテーマに機械学習をかけあわせてデザインいたしました。側彎症の進行予測が可能になることは、適切な治療タイミングを逸しないことや適切な診療・被曝間隔の設定や患者精神的負担の軽減につながります。一方で過去研究ではCTや矯正レントゲンといった日常外来診療に適さない特徴量での研究がほとんどでございました。そのため、本研究では日常診療に適応可能な予測モデル作成を目指しました。

結果として、初診と2回目受診という側彎症診療の非常に初期のシンプルなデータのみで過去研究の最高精度に匹敵・凌駕する結果を出すことができました。今後は画像データを織り交ぜたマルチモーダルなモデルでさらなる精度向上を目指す所存でございます。

最後に、グループの垣根を越えて機械学習指導、論文作成指導を行ってくださいました牧聡先生、データ収集、利用の許可からはじまり、側彎症治療者としてたくさんの助言をいただきました小谷俊明先生、研究開始の承諾をいただきました大鳥精司教授をはじめとします腰椎班の先生方に心より感謝申し上げます。

今後も引き続き、臨床、研究ともに精進いたしますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

 

臨床部門:Weng Chung-Jui先生(Chang Gung Memorial Hospital )

「Onlay vs. Inlay Lower Trapezius Tendon Transfer and Biceps SCR for massive irreparable posterosuperior cuff tears 」

 

 

若手部門:鈴木諒先生(令和2年卒)

「整形外科手術におけるサージカルスモークの発生状況」

この度は、千葉医学会整形外科例会の若手部門Awardを受賞することができ大変光栄に存じます。

本研究は、電気メスなどを使用した際に発生するサージカルスモークに含まれるPM2.5に着目しました。人体に対する有毒性が問題となっており、整形外科領域では報告がほとんどありません。今回我々は、当院の関節手術におけるサージカルスモーク発生状況について調査しました。結果としましては、BHP群はTHA群と比較し健康に害を及ぼす濃度のPM2.5に暴露する量・時間が有意に多いことが分かりました。理由としましては、当院におけるBHPはDirect Lateral Approachであり、Direct Anterior Approachで行っているTHAよりも軟部組織を切開・凝固する量が多いからと考えられました。対応策として、N95マスクや排煙装置付き電気メスなどの導入が必要と考えられます。

 

今回ご指導くださいました土屋流人先生、矢野斉先生、また協力して下さった船橋市立医療センター整形外科の先生方にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。また、このような貴重な機会をくださいました大鳥精司教授、同門の先生方に心から感謝申し上げます。

今回の受賞を励みにより一層精進して参りますので、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

 

 

千葉大学大学院医学研究院整形外科学

 教授 大鳥 精司

医局長 松浦 佑介

事務担当代表 橋本 瑛子

事務担当 濱田 剛史