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浜松ピアノ国際アカデミー2024 参加報告記

更新日 2024.3.11

平成19年卒
金塚 彩

浜松ピアノ国際アカデミーは、選抜された若いピアニストが国際色豊かな講師陣による指導を受け、披露演奏会を行うプロジェクトである。故中村紘子先生に引き続き、現在は小川典子先生が音楽監督を務めておられます。参加者からは優秀なピアニストが多数輩出されており、毎年開催を楽しみにする音楽家愛好家も多いイベントです。また演奏指導のみならず、講師の経験に基づく実践的レクチャーのほか、様々な分野のエキスパートによる招待講演も好評のようです。

 

私は昨年、本アカデミーで「からだのしくみとピアノ演奏 〜手の故障を予防して最高のパフォーマンスを〜」という講演をする機会をいただきました。若いピアニストが懸命に練習に打ち込む姿や、指導者が教える様子を間近に垣間見ることができ、非常に貴重な経験でした。

 

その後、パフォーミングアーツ医学の診療や音楽大学でのアウトリーチ活動等を通じ、音楽家の身体的ケアと同様に、メンタルケアの重要性を認識するようになりました。スポーツアスリートにおいてはメンタルトレーニングの必要性はすでに広く知られていますが、音楽家の分野では十分には議論されていません。本番で最高のパフォーマンスを発揮しなければならないのは、音楽家もアスリートも同様であり、ニーズは高いと考えています。そこで今回、本学精神医学教室の伊豫 雅臣教授に、「ピアニストのメンタルケアについて 〜大きな本番に向けて、心のケアをしよう〜」というテーマでのご講演をお願いし、実現することになりました。

 

伊豫先生はスポーツ精神医学分野でもご活躍されており、トップアスリートのメンタルケアにも関わっておられます。伊豫先生らが訳された「ハーバード卒・元メジャーメンタルコーチが明かすメンタルトレーニングの奥義」(ベースボール・マガジン社 2021年)も大変興味深く読ませていただきました。今回の講演では、イメージトレーニングの活用、聴覚学習効果、視床記憶、フロー状態(ゾーンに入る)、ストレスと不安への対処法、認知行動療法的アプローチ、睡眠についてなど、幅広い話題をわかりやすくお話いただきました。会場の方々は皆熱心に聴講され、特に若いピアニストは積極的に質問をしていました。

 

パフォーミングアーツ医学の発展には、様々な専門家との交流が必要であると感じております。お忙しい中ご講演をお引き受け下さった伊豫先生、またご調整を賜りました、音楽監督・浜松国際ピアノコンクール審査委員長の小川典子先生、東京音楽大学教授の石井克典先生には、改めて御礼を申し上げます。

 

伊豫先生 ご講演の様子

 

3人での記念写真