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第34回日本脊椎インストゥルメンテーション学術集会を主催して

更新日 2025.11.4

第34回日本脊椎インストゥルメンテーション学会学術集会 会長
北里大学整形外科主任教授 髙相晶士

Spine Week Japan 2025(SWJ2025)第34回日本脊椎インストゥルメンテーション学会学術集会を主催させていただきました。活発と革新をモットーとする本学会を素晴らしいものとするべく計画しました。日本脊椎インストゥルメンテーション学会はSWJ2025参加学会の中では最も規模の大きな団体となります。おそらく本学会が最も参加者も多かったかと推察いたします。演題数もSWJ2025 の37.5%を占めておりました。

 

 脊椎疾患の診断と治療は様々な整形外科疾患の中でも最も古い歴史を有します。様々な診断機材が開発され、併せて、様々なインストゥルメントも開発され応用されてきました。1963年にかのハリントン博士がハリントン手術を行い、約60年が経過しました。インストゥルメンテーションは脊椎外科手術の歴史そのものといえますが、まさに今こそその長い歴史を評価できる時期にきたと言えます。また、インストゥルメントばかりでなく、ナビゲーションやロボットといった、そのインストゥルメンテーションテクニックの補助手段の進歩も目を見張るばかりです。その他、AIやICTなど診断と治療の努力もなされています。脊椎疾患の診断、治療はインストゥルメンテーションの進歩とともに確実に進化しています。こういった中で本学会を主宰させていただきました。今回の学会テーマは、『叡智と開拓』とさせていただきました。叡智とは、優れた知恵、そして、深遠なる物事の道理に通じる才知と言った意味のみならず、哲学で、物事の真実在の理性的かつ悟性的認識、さらにはそれを獲得しうる力、哲学、ソフィアという深い意味があります。脊椎外科医は、哲学を持ち、患者さんと疾患に立ち向かう才人であるべきと考えております。そして、開拓は、新しい分野と進路などを切り開くことを指し、まさに脊椎インストゥルメンテーション技術が進むべき道を現していると考えました。同時に、脊椎疾患の診断と治療の歴史は長いものであり、脊椎インストゥルメンテーションを通じて、これを着実に後世に伝えていくとともに、時代も変化と革新が大切です。今こそ、脊椎インストゥルメンテーションの進化と革新の中には方向転換や逆転発想も場合により必要です。

 

SWJ2025では私だけが唯一会長講演をさせていただき、脊椎外科について思うところを披露させていただきました。恒例のKumu-Cloward Lectureは 座長として私が担当させていただき、筑波大学名誉教授で千葉大学昭和58年ご卒業で同門の山崎正志先生に、『私が経験してきた脊椎外科 – 先輩からの教え・後輩に伝えたいこと -』と題した素晴らしくも、また千葉大学の話題を多く入れたご講演をしていただきました。多くのシンポジウム、レクチャー、口演を通して、我が国の絶え間なき脊椎インストゥルメンテーション研究成果の披露と世界に発信できる叡智そして開拓の披露がなされたと確信しております。さらに、本学会でこだわったのは若手脊椎外科医のモチベーションを高揚させることでした。多くのアワードを設定しましたが、これに呼応していただき素晴らしい若手の発表とディスカッションがなされました。これからは若手がますます頑張り成果を出し、世界に目を向けて行って頂きたいと強く感じた次第です。

 

 SWJ2025は大成功の裡に幕を閉じました。日本脊椎インストゥルメンテーション学会は日本で最も歴史ある脊椎関連学会となっております。若手はもちろんのこと、オーソリティの先生方にも活発な討論を広げていただき素晴らしい学会となりました。ますます本学会とSWJが発展し、日本の脊椎外科文化が進展進歩することを期待いたします。

 

本学会におきましては関係者の皆様に大変お世話になりました。また事務局長を引き受けていただき大活躍の北里大学整形外科診療准教授宮城正行先生には大変なご苦労をおかけしました。この場をお借りして深くお礼を申し上げます。