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ESSKA-APKASSトラベリングフェロー報告

更新日 2018.5.23

千葉大学整形外科 赤木龍一郎

この度、ESSKA(ヨーロッパスポーツ外傷・膝・関節鏡学会)とAPKASS(アジア太平洋膝・関節鏡・スポーツ医学会)のスポーツ医学トラベリングフェローに選ばれ、2018年4月19日〜5月13日の日程で勉強にいく機会をいただいたのでご報告申し上げます。

本トラベリングフェローは45歳以下のAPKASS会員から3名が選出され、ヨーロッパ各地の病院を周りながら手術見学や学術的な情報交換、文化交流を行うものです。今回は日本から私、また台湾からDr. Chih-hao Chiu(Taoyuan Chang Gung Memorial Hospital)、韓国からDr. Hyuk-Soo Han(Seoul National University Hospital)が選ばれ、Singapore General HospitalのProf. Denny LieがGodfatherとして引率する形での参加となりました。約3週間半の間にトルコ(イスタンブール、Prof. Mustafa Karahan)、ギリシャ(ラリッサ、Dr. Micheal Hantes)、イタリア(ローマ、Prof. Giuseppe Milanoおよびボローニャ、Prof. Stefano Zaffagnini)、ドイツ(ハイデルベルク、Prof. Rainer Siebold)、ベルギー(アントワープ、Prof. Peter Verdonk)を巡り、最後にイギリス(グラスゴー)で開催されるESSKAの学会に参加するという旅程でした。ESSKAの直前にはヨーロッパ、アジア、北米、中南米のトラベリングフェロー経験者からなるMagellan Society Meetingにも出席いたしました。

3−5日おきに荷物をまとめて次の滞在地に移動するというめまぐるしいスケジュールの中、各地で数多くの靭帯再建術、半月板縫合・移植術、人工膝関節置換術、脛骨・大腿骨骨切り術などの膝関節手術を中心に、腱板縫合などの肩関節手術も見学する機会がありました。いずれの施設も少しずつ独自の工夫があり、前十字靭帯再建術ひとつをとっても術式がすべての施設で異なること、多くの施設で外側の関節外再建を併用していることが印象的でした。特に、欧米では他家組織を用いた手術が非常に多く行われており、靭帯再建での使用や日本ではまだ一般的に行われていない半月板移植術を見学できたことは大変勉強になりました。また、すべての訪問先で現地医師とお互いに研究発表をし、ディスカッションをする機会があったことは非常に有意義でした。私は当院で施行している前十字靭帯再建術と後十字靭帯付着部剥離骨折に対する関節鏡視下整復固定術の術式紹介および成績の報告をしてきました、非常に高い関心を持っていろいろ質問していただき、議論できたことは今後に向けて大きな自信となりました。

もう一つ、トラベリングフェローで各地を訪問する中で欠かせないのが文化的交流です。行く先々でホストからは非常に温かく歓迎され、様々な食文化や歴史に触れました。一緒に旅をしたアジア人も含めて宗教的、文化的背景の異なる多くの人々に出会い、互いに違いを受け入れながら理解しようとすることで友好を深めることができたと思います。何よりもこの機会に得た数々の貴重な出会いは今後の人生において大きな財産になると感じています。

最後になりますが、3週間以上にわたる不在をお許しいただいた佐粧教授、大鳥教授をはじめ留守中の業務に関してサポートいただいたスポーツグループおよび医局の皆様に心より感謝申し上げます。ここで得た経験を今後の臨床、研究に活かし、後輩に還元していきたいと思います。