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JSSRアジアトラベリングフェロー報告記(韓国)

更新日 2024.6.3

千葉大学 整形外科
牧 聡(H18年卒)

2023年5月20日から5月31日にかけて、韓国の脊椎のハイボリュームセンターである7施設(Yongin Severance Hospital、Seoul National University Hospital、Samsung Medical Center、Korea University Guro Hospital、Asan Medical Center、Soon Chun Hyang University Hospital Seoul、Kyung Hee University Hospital Gangdong)を訪問し、さらに韓国の脊椎脊髄病学会であるKSSS2024に3日間参加しました。

 

訪問中、韓国ではインターンとレジデントがストライキ中であり、多くの病院が大きな影響を受けていました。手術件数を半分くらいに制限したり、大きな手術は避けるようにしていましたが、大変ありがたいことに訪問先の病院では私たちのために手術スケジュールを調整してくださっていたようでした。

 

今回のトラベリングフェローでは、東京大学整形外科の谷口優樹先生、筑波大学整形外科の高橋宏先生、そして台湾からのフェロー2名と一緒に回りました。不在中は、古矢先生、頚椎班の大学院生、フレッシュマンの先生方にお世話になりました。このような貴重な機会を与えてくださったJSSRと大鳥教授に心より感謝いたします。

 

KSSS2024は春のInternationalと秋のDomesticに分かれていて、演題も1-2割は海外からであったため、全て英語での発表となっていました。学会が40周年ということもあり、海外ゲストが多かったことも英語化の理由かもしれません。英語でのディスカッションは韓国の先生方にとってもやや辛いとのことでした。日本でも海外からの発表者を増やすのであれば、スライドや発表言語の英語化は避けられないかもしれません。

 

韓国の医療システムについても学ぶことができました。韓国では大病院志向が強く、どの医者にかかっても値段は同じため、大病院に予約が集中する傾向にあります。健康保険の自己負担割合は3割で、入院期間は概ね日本と同様とのことでした。

 

今回のトラベリングフェローを通じて、韓国の脊椎外科のいわゆるトップの施設の現状と手術の技術を肌で感じることができました。基本的に臨床における治療ストラテジーや研究のコンセプトなどは人種や疾患の分布が似ているため、医師や施設間で若干の違いはあるものの、日本と似ていると感じました。ただ韓国全域からソウルへのアクセスが容易なこともあり(遠くても4-5時間でアクセス可能とのこと)症例を集約化して、Professorの職位の先生がチームの上に立ってフェローとレジデント(現在はストで不在)のサポート(術前の準備から術後の病棟管理まで)を得ながら手術をたくさん効率よくこなしていく様子はアメリカに近い部分もあると感じました。

 

各施設の教授やスタッフの先生方の温かい(熱い?)おもてなしにも大変感銘を受けました。韓国のおもてなしや接待文化は元々非常に強いことに加え、過去に日本の先輩脊椎外科医の先生方が韓国の先生方との友好的な交流が背景にあり、今回の我々への歓迎につながったと確信しております。実際この4月にJSSRのプログラムで日本を回った韓国のフェローの先生方からも大変良くしていただきました。この経験を糧に、今後も韓国の脊椎外科医の先生方との関係をさらに発展させていきたいと考えています。

 

今回の経験を通じて、韓国の脊椎外科医の洗練された手術手技と治療戦略を学ぶことができ、自らの臨床にも大いに参考になると感じています。今後は、この経験を生かして患者さんにより良い医療を提供できるよう精進して参ります。

KSSSにて高橋先生、谷口先生と