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McGill大学留学便り

更新日 2019.8.17

H21年卒
瓦井 裕也

平成21年卒の瓦井裕也と申します. 2019年4月よりカナダMcGill大学に留学させて頂いております. この場をお借りして近況を報告させて頂きたいと思います.

 

  1. 留学先のMcGill大学について

McGill(マギル)大学は1821年に創立されたカナダで最も歴史ある大学で, Quebec州Montrealに位置します. Toronto大学,VancouverのBritish Columbia大学と並び,カナダで最も権威のある国際的研究大学機関の一つあり,現カナダ首相であるJustin Trudeau を輩出した大学としても有名です. ケベック州に位置するため,現地の公用語はフランス語ですが,大学内では全ての教育研究を英語で行う英語圏の大学であります. しかし,英語圏の大学とはいえ,元来フランス語を母国語とする学生や職員も多く,さらにはアメリカ,ヨーロッパだけでなく,アジアからも多数の留学生を受け入れているため,キャンパスの中では様々な言語が行き交っています. マギル大学では特に医学研究が盛んであり,医学教育に多大な功績を残した内科医Dr. William Osler(心内膜炎のオスラー結節でご存じの方もいるしれません)や脳外科医Dr. Penfield(手術器具で耳にした方も多いと思います)を輩出しております.

 

  1. Montrealについて

モントリオールはトロントに次ぐカナダ第 2 の都市であり,モントリオールの住民の7割近くは, フランス語を第1言語とするフランス系カナダ人です. 街は”北米のパリ”と称されるほど、ヨーロッパの雰囲気が漂っています. その景観の良さから多くのハリウッド映画がモントリオールで撮影されています. またスイーツやクロワッサン, フランス料理にワインなど食に関しても楽しめる街だと思います. 2018年6月から成田からの直行便路線も開設されておりますので, 是非一度, 足を運んで頂けたらと思います.

 

  1. 研究について

現在私はThe Alan Edwards Center for Research on Painに属するDr. Stone Pain Labで慢性運動器疼痛の基礎研究をさせていただいております. McGill Pain Questionnaireでも有名なこのペインセンターは,疼痛研究において最もアクティブな研究機関の一つであります. 私が所属するDr. Stone Pain Labは,Principal InvestigatorのDr. Stoneを中心に私を含め 4人の研究員と大学院生, 学部生5人を含む計 10 名で構成されています. Labにきてからの課題はまず大学のWorkshopをクリアすることでした. McGill 大では新規動物研究者に対し, 必須のWorkshopを課しております. マウスの持ち方から麻酔法, 投薬, 安楽死などすべて実技がテストされその後試験を受け, すべてパスしないと動物研究を開始できません. 何とか1ヶ月かけてWorkshopを終えたものの, その後, 研究室内でのQuality checkが待っていました. これはStone Lab独自の試験で, 96 well plateにてLowry法にてタンパク定量を行い, 1µlのピペット操作が正確になるまで合格できないというものでした. 日本でも沢山のピペット操作を行ったつもりでしたが, 界面活性剤入りの溶媒を用い, 1µlピペット操作で triplicateをおいて再現性を厳しく求められました. 後にこの大切さを痛感するのですが, これをクリアするのに一ヶ月弱かかりました. その後マウスの経皮的心採血, DNA/RNA抽出, ELISAによるタンパク定量, WBC分離, cDNA合成, reverse transcription qPCRといった基礎的手技を一から教えて頂きました. 特にRTqPCRでは正確かつ迅速なピペット操作が必須であり, 最初の試験の大切さを身にしみて理解することができました. そして現在私に与えられたテーマは「運動器慢性疼痛に対するepigenetic解析」と「MRIにおける椎間板変性に応じたマウス椎間板サンプルにおける全転写産物解析」の二点であります. いずれも次世代シークエンシング技術を用いて, DNAのエピゲノム修飾ないしはトランスクリプトーム解析(全転写産物の塩基配列を同定)を行うことになります。詳細は来年度またご報告できたらと思います。

と, ここまでとりとめの無い内容になってはしまいましたが、日々充実した毎日を過ごしております。最後になりましたがこのような貴重な機会を与えて下さいました大鳥精司教授,千葉大学整形外科同門の先生方,そして海外留学助成金をいただきました上原記念生命科学財団の皆様にこの場を借りて, 厚く御礼申し上げます. 今後ともご指導ご鞭撻の程何卒宜しくお願い申し上げます。

  • Stone Pain Labのメンバー(写真右最前列がDr. Stone)