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ジュネーブ国際機関研修報告

更新日 2023.9.27

平成30年卒
岩田秀平

2023年9月11日から15日にかけて、千葉大学予防医学センター主催のスイス・ジュネーブでの国際機関研修に参加する機会を得ましたので、報告させていただきます。

 

研修内容としてはジュネーブの以下の国際機関を訪問し、各機関の職員の方々とのディスカッションを行いました。

・世界保健機関 (World Health Organization:WHO)

・国際連合ジュネーブ事務局(The United Nations Office at Geneva:UNOG)

・国際労働機関(International Labour Organization:ILO)

・国連難民高等弁務官事務所 (United Nations High Commissioner for Refugees:UNHCR)

・国際連合児童基金(United Nations International Children’s Emergency Fund:UNICEF)

・国際連合訓練調査研究所(United Nations Institute for Training and Research:UNITAR)

・世界気象機関(World Meteorological Organization: WMO)

・国境なき医師団(Medecins Sans Frontieres: MSF)

・国際赤十字赤新月社連盟(International Federation of Red Cross and Red Crescent Societies:IFRC)

・在ジュネーブ国際機関日本政府代表部

 

特に印象的だったのは、UNHCRにおいて緒方貞子氏(第8代国連難民高等弁務官)の果たしてきた役割の大きさを改めて知ったことです。現場の状況に応じて、最も役に立つ(人の命を助ける)方法は何か、そのためにできる仕事は何か、ということを判断基準に数々の交渉に当たり、支援をリードし尽力してきたことに大変感銘を受けました。これまでWHOやUNHCRなどのジュネーブ国際機関は、崇高な大義をもつけれどもどちらかと言えば現実離れした組織という、かなり抽象的なイメージしか持っておりませんでしたが、世界中の困難な現場に対応し、世界をより良くするために日々現実と向き合い、より実践的に、具体的な結果を出せるように働いているということを知ることができました。公衆衛生の名のもとでパラレルワールドを作るのではなく、あくまで現場主義の延長で行動するべき優先事項を決めていくという考え方は、今後の医師人生に活かしていきたいと思います。

 

WHOでは今後の課題として、気候変動、高齢化、新技術(AI等)、そしてダイバーシティなどの世界の潮流にどうHealthを乗せていくかという視点で動いており、変化の激しい時代に対応できるようWHO自体も変動に耐えうる組織に変えていくという話が印象に残りました。新型コロナ対策ではウイルスのパンデミックだけでなく情報によるインフォデミックも起こったため、WHOもSNSの発信やインフルエンサーとの協力など、より柔軟さが求められたとのことでした。国やグローバルファンドとのコミュニケーションなどが重要となる場面もあるがあくまでHealthは政治とは別次元で人間の基本的な人権であり科学的根拠に基づいて万人に提供するものであるべきという理念を学びました。また、私が現在研究を行なっている骨軟部腫瘍領域においてもWHOがWHO Classification of Tumours(通称WHOブルーブック)として専門家で取りまとめた腫瘍の診断治療の国際基準を提供しており、希少疾患においても臨床や研究の基盤を整備する重要性を感じました。

 

国際機関で働く日本人の方は、JPO制度を用いた方や厚労省などからの派遣の方、そして現地でポジションを得て働く方など様々で、世界を舞台に活躍する方々と直接ディスカッションをすることは非常に有意義でした。今後はより視野を広く、視座を高く、そして多様な視点で物事を考えられるように、将来どのような形かはまだわからないですが、私もグローバルに活躍して社会に貢献していきたいと考えています。

 

また、研修の合間には国際都市ジュネーブの市内観光を行いました。ジュネーブの街は古き良き街並みと自然豊かなレマン湖やアルプス山脈の景色が綺麗な一方で、歩きタバコが多く治安も良くないエリアもあり、WHOなどの国際機関がある都市とは思えない一面も抱えていました。名物のチーズフォンデュや、フランス料理をはじめとする多国籍の料理、国内消費が多く世界に出回らない貴重なスイスワインも楽しむことができました。

 

最後になりますが、このような貴重な機会を与えてくださった森教授、戸高教授をはじめとする千葉大学予防医学センターの皆様、大鳥精司教授をはじめとする千葉大学整形外科同門の皆様、そして現在所属する国立がん研究センター研究所希少がん分野の皆様に深く御礼申し上げます。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

 

WHOの建物

 

国際連合ジュネーブ事務局の前で研修メンバーと