2023年度 台湾Travelling Fellowship参加記
更新日 2023.11.8
この度、葉 國璽先生、葉 佐俊先生、整形外科医局のお力添えで2023年10月27日から11月3日にかけて台湾へのTravelling Fellowshipに参加させていただきました。今回で4回目の交流となりますが、新型コロナウイルス感染の影響でここ数年行われていなかったため、2019年度以来の交流となりました。私自身、医師になってからの国外への留学は初めての経験でした。
2023 Annual Meeting of Taiwan Orthopaedic Associationについて
まず、10月28日から29日に台北マリオットホテルで行われた2023 Annual Meeting of Taiwan Orthopaedic Associationに参加しました。その中で、反転型人工肩関節置換術の術後合併症に関する多施設研究の結果を発表させていただきました。本学会では約7部屋を使用して様々なテーマで議論が交わされていましたが、部屋ごとに脊椎や外傷などのテーマが割り振られており、1つの部屋にいれば朝から晩まで同じテーマの内容を聞くことができました。私は肩疾患関連の発表をしたため、腱板修復の成績を向上させる方法や、腱板断裂に影響する因子に関する基礎研究についての発表などを聞きました。その中で、特にシステマティックレビューに関する発表が大変多く、日本とはやや異なるリサーチマインドがあることに感銘を受けました。日本ではあまり聞くことのない内容も多くあり、今後の研究や臨床に大いに役立てたいと感じました。
林口長庚紀念醫院(Chang Gung Memorial Hospital)での研修について
10月30日から11月3日にかけては国際空港を有する桃園という地域にある基幹病院、林口長庚紀念醫院(Chang Gung Memorial Hospital; CGMH)で研修をさせていただきました。CGMHは約3000の病床を持つ大病院で、手術室は約120室あります。日本のショッピングモールにあるような大きいフードコートが地下にあり、台湾グルメをすべて満喫できるといっても過言ではないほどでした。整形外科の病床は約200床あり、整形外科の手術が行われる手術室は15室ありました。私は肩関節と膝関節に関する手術を主に見学させていただき、各Professorに1つずつ手術室が割り当てられており、3-4件/日の手術が行われていました。千葉大学では肩と肘、膝と足というグループ分けがされていますが、CGMHでは肩と膝の手術をどちらも行う医師がほとんどでした。主に陳 昭宇先生(Prof. Chen)、邱 致皓先生(Prof. Chiu)の手術を見学させていただき、どれも大変勉強になりました。特に印象に残ったのは、広範囲腱板断裂に対するdermal allograftを用いた鏡視下上方関節包再建術と、膝前外側靭帯と前十字靭帯の同時再建術でした。また、日本とは違い使用したインプラントの一部は患者負担になるためコスト意識が非常に高い手術が多く、大変勉強になりました。邱 致皓先生とFellowshipの先生方には会食に連れて行っていただきました。鍋で調理した猪血という食材を初めて食べ、見た目とは違う爽やかで食べやすい味に衝撃を受けました。
今回のCGMHでの研修ではFellowshipの徐 振恆先生に何から何までお世話になりました。そのHospitalityの高さにとても感銘を受け、本年12月に台湾から千葉大学に来るTravelling Fellowの先生にも同じようなおもてなしができるよう努力する所存です。
最後に
この度は貴重なTravelling Fellowshipの機会をいただきありがとうございました。海外の診療や仕事への向き合い方、英語力の高さにふれることができ、今後の医師人生における大きな財産になりました。今後も台湾と日本の交流が続くことを願っております。
平成26年卒 稲垣 健太
2023年10月23日〜11月3日にかけて台湾Fellowship Travelとして国立台湾大学醫学院付設醫院(National Taiwan University Hospital; NTUH)と林口長庚紀念醫院(Linkou Chang Gung Memorial Hospital; CGMH)を訪問させていただきました。また10月28日〜29日には2023 Annual Meeting of Taiwan Orthopaedic Association (TOA)にも参加させていただきました。このFellowship Travelは葉 国璽先生(平成5年卒)、葉 佐俊先生(平成25年卒)らにご尽力いただき企画いただきました。この場を借りて厚く御礼を申し上げます。
国立台湾大学醫学院付設醫院(National Taiwan University Hospital)での研修について
10月23日〜10月27日にかけて国立台湾大学醫学院付設醫院(National Taiwan University Hospital; NTUH)を訪問致しました。NTUHは約1,000床の総合病院で台北市内にあります。もともと台湾大学が旧帝国大学の1つであった経緯もあり、旧丸の内駅舎にも似た建物の旧館を用いた外来棟と入院・救急診療棟、小児専用病棟があります。私は主に骨科脊椎グループの診療を見学させていただきました。台湾では整形外科は骨科とされ、整形外科は形成外科を意味しています。脊椎班は週3日の手術日と週1日の外来日がありました。主に楊 曙華教授や王 廷明教授、胡 名孝先生の手術を見学しました。内容はTLIFや椎体形成、頚椎椎弓形成といった一般的な症例や転移性脊椎腫瘍に対するTumor separation、変性後側弯や先天性側弯の側弯症手術などの特殊な症例も見学いたしました。NTUH滞在中や週末のTOA参加においては脊椎フェローの許 瑞佑先生に大変協力していただき、鼎泰豊をご馳走していただきました。許先生は本年12月に千葉大学を訪問されますのでより良いフェローシップとなるよう協力したいと思います。
林口長庚紀念醫院(Linkou Chang Gung Memorial Hospital)の研修について
10月30日から11月3日は台北市より西部にある桃園市の林口長庚紀念醫院(Linkou Chang Gung Memorial Hospital; CGMH)で研修を行いました。CGMHはアジア有数の病院規模で3,000床、手術室120室と大変大きな病院でした。骨科では常時12室+外傷用3室が割り当てられており、脊椎手術は週5日毎日手術を行っておりました。賴 伯亮教授、蔡 宗廷教授の手術を見学いたしました。症例は台湾大学や日本と類似しておりましたが、カナダからの医療ツーリズムの患者がいた点は驚きました。台湾では保険制度の都合で使用できるインプラントや術式の制限があり、それを超えるインプラントは患者負担となるため医師のコスト意識は非常に高かったです。また術前検査についても同様で脊椎手術でMRI、CTは基本的に片方(基本はMRI)のみとしておりました。
また小児グループでは脳性麻痺の患者を対象とした歩行解析を行う研究室があり、実際の解析データを用いたボツリヌス注射に関するカンファレンスを見学いたしました。カメラ8台で歩行を撮影し歩行サイクル中の骨盤以下の関節の可動域や傾斜を測定、実際の測定結果からボツリヌス注射が最適な部位を全員で検討しておりました。医工連携によるオーダーメイド医療の一端を見て感銘を受けました。
最後に
大変貴重な機会をいただきご関係の先生方に誠に感謝いたします。初めての海外の実臨床を間近に経験することができたこと、NTUH、CGMHの同年代の優秀な先生と出会えたことはとても刺激となりました。この出会いを大切にしたいと思います。
平成29年卒 北川 恭太