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第11回千葉県サッカー医科学研究会を開催しました

更新日 2021.3.12

聖隷佐倉市民病院
村松 佑太

2021年3月6日(土) 第11回千葉県サッカー医科学研究会が開催されました。

 

 例年本会はサッカー医科学に関する一般演題と特別講演で構成され、ドクターだけでなくサッカーに関わるトレーナーや指導者などにもご参加頂き、会終了後にはサッカー関係者として様々な立場で参加者同士が情報交換できる場を設けておりましたが、今年はコロナ禍のためWeb開催となりました。

 

 一般演題や交流の場はありませんでしたが、特別講演として成田赤十字病院 感染症科 部長 馳亮太 先生に「スポーツ関係者のための新型コロナウイルス感染症対策アップデート」という非常にタイムリーな演題名でご講演を賜りました。

 

 新型コロナウイルス感染症の基本的な解説から現場でも活かせる具体的な対策、そしてワクチンの話まで、幅広くまたとても分かりやすいお話を聞くことができました。自らもサッカー経験者である馳先生のご講演には、サッカーの話題も随所に散りばめられており、サッカー関係者にとっては大変親しみやすい講演でもありました。

 

 スポーツ現場での具体的な新型コロナウイルス感染症対策は挙げればきりがありませんが、昨今のプロスポーツ競技では定期的なPCR検査が行われていることが多く、あくまで検査の時点においてはということになりますが、陽性者はいない、という前提で競技は行われています。競技中またはトレーニングの感染リスクに備えること以上に、選手の日常生活において一般的に言われているリスク(いわゆる3密)を避けるよう選手たちを啓蒙し、いかにしてその競技グループ内に陽性者を入れないかが重要であるとのことでした。スポーツ関連で発生するクラスターの多くにおいて、選手の会食や寮生活などが発生原因および拡大要因であることが疑われており、その考えの裏付けとなっています。

 

 また、休むことが得てして怠けていることに捉われがちなスポーツ現場において、Jリーグのガイドラインにも記載されております、少しでも体調が悪ければ “休むことができる文化の醸成を” という考え方は、陽性者および濃厚接触者を競技グループ内に入れずにスポーツ活動を守るという意味では非常に意義のある概念で、馳先生もご講演の最後のまとめで改めてこの点について強調されておりました。

 

 講演中は一貫して、感染症対策はなぜそのような対策をするのか理由を考えながら実践することが重要とされ、その感染症の特徴をよく知ったうえで合理的で現実的な対策をすることが求められるとお話されておりました。例えば接触感染への対策は、環境表面の消毒を徹底的に行うよりも、我々が手指の衛生をしっかり守ることがより効果的であり、よく考えるとやらなくてもよい対策を我々はやっているかもしれず、馳先生のご講演は改めて現場活動での感染対策を見直すきっかけとなり、まだまだ収束の見えないコロナ禍において、スポーツ活動を促進するためのヒントを多く頂けたように思います。

 

 本研究会には106名のスポーツ関係者が聴講者として参加してくださり、チャット形式で多くの質問が寄せられ関心の高さがうかがえました。時間の都合上、全ての質問をとりあげることができませんでしたが、会終了後もメールで聴講者からの質問に快く対応してくださった馳先生の真摯な姿勢に感服するとともに、立場上大変お忙しい時期に本会での講演依頼を引き受けてくださったことに改めて感謝したいと思います。

 

 東京オリンピック・パラリンピックを含め、今後のスポーツ界が少しでも良い状況に向かうことを願うばかりです。

 

写真1: 感染対策のため演者・座長らの席の間は手製の敷居が準備されました。会場は換気され体調不良者もおらず皆マスク着用でしたので、これもやらなくてもよい対策だったかもしれません。

 

写真2: 左から筆者(村松), 土屋 敢先生(千葉県サッカー協会医学委員会委員長), 馳 亮太先生(演者), 山口智志先生(千葉県サッカー協会医学委員会副委員長)
会終了後、馳先生のご指導のもと、喋らないことを約束に皆で撮影時のみマスクを外して写真を撮りました。