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世界水泳2023福岡大会 救護業務参加のご報告

更新日 2023.7.27

H28卒
寺川文英

現在7月14日から30日にかけて福岡にて開催されております、第20回世界水泳選手権大会(World Aquatics Championships FUKUOKA 2023)の大会救護に参加いたしましたので、報告させていただきます。

 

今回の世界水泳は大きく4つの会場に分かれて運営されております。マリンメッセAではアーティスティックスイミングと競泳、マリンメッセBでは水球、福岡県立総合プールでは飛込、シーサイドももち海浜公園ではオープンウォータースイミング(OWS; 遠泳)とハイダイビングがそれぞれ独立して進行しております。今回私はOWSに3日間、水球に1日間、ハイダイビングに4日間、計8日間、大会救護として参加させていただきました。それぞれの競技および会場の雰囲気と救護内容について報告いたします。

 

OWSは海で行われる遠泳競技のことで、10km, 5kmの個人種目と男女混合の6kmのリレー種目があります。救護対象として多いのは、熱中症、打撲などの外傷、クラゲ刺傷などになります。夏場の開催で水温が31℃を超えるとレース自体が中止の判断となりますので、オリンピック同様早朝からの開催となりました。幸いアイスバスを要する重度の熱中症患者は来院しませんでしたが、接触による外傷患者とクラゲ刺創は多数来院しており、レース前後はあわただしい印象でした。なお今回の救護では聖マリアンナ医科大学整形外科の肩グループの嶋田洋平先生ともご一緒させていただきました。

 

水球はヨーロッパを中心にリーグ戦が行われている球技で、主な救護対象は接触による外傷になります。今回私の勤務日は来院者なく平和に終わりましたが、他の日は数十人来院する日があるなど、救護業務が重要な競技の一つになります。また顔面外傷が多いこともあり歯科医師が配置されているのも特徴の一つとなります。

 

ハイダイビングは2013年の世界水泳バルセロナ大会から導入された種目で、国内では初の開催で注目を集めています。もともとハワイの王族が戦士たちに勇気を見せるために崖から海に飛び込んだことが起源とされており、現在はRed Bull主催の世界ツアーが選手たちの主戦場となっています。女子は20mから、男子は27m(ビル9階相当)から飛び込んで競い合うクレイジーな競技ですが、競技人口の少なさと危険さも相まって選手間の結びつきが強く、国を超えてファミリーのような一体感を感じる温かい競技です。日本代表はまだ荒田恭平選手ただ一人という認知度の低い競技ですが、今回の大会を通じてその魅力が若い競技者たちにも広がってくれることを願っています。主な救護内容はダイブ失敗時に備えレスキューダイバー達と連携して離水・上陸させ、搬送の要不要を判断し処置することです。幸い勤務中に搬送する事態には至りませんでしたが、着水時の衝撃で上腹部を打撲し呼吸困難になるケースが1件あり、ダイブごとに緊張感の走る現場となっていました。

 

最後になりますが、この度は前後泊も含め10日間という長期間のお休みをいただき、貴重な経験をさせていただきました。快く送り出していただいた大鳥精司教授、落合信靖准教授、橋本瑛子助教、肩グループの大学院の先輩方およびフレッシュマンの先生方に、心より御礼申し上げます。

 

OWS期間中、救護テントに鈴木大地元スポーツ庁長官が激励に来てくださいました。

 

ハイダイビング競技の様子

 

27mからの眺め